アンテナの設計とシミュレーション
アンテナの設計を効率化する SIMULIA 電磁界シミュレーション
RF アンテナ設計におけるシミュレーションの役割
アンテナ設計とは、帯域幅、偏波、指向性などの仕様を満たす適切なアンテナ素子を選定するプロセスです。アンテナ・シミュレーションは、最も適したアンテナ設計を特定するうえで役立つほか、実環境での設置性能や干渉を明らかにします。
アンテナのタイプ
アンテナは、コネクテッド・デバイスや無線システムの根幹をなす装置です。スマートフォン、コンピュータ、電子インプラント、産業機械、自動車、電車、航空機、宇宙船など、今日のほぼすべての機器は、アンテナを搭載して Wi-Fi、Bluetooth、5G といった通信プロトコルに対応しています。これからの趨勢となる 6G や衛星インターネットによるメガコンステレーションにも、アンテナの新たな設計や設置が必要です。
アンテナには、通信以外にもさまざまな用途があります。レーダー・システムは電波の送受信に、各種センサーは設置環境に関するデータの収集にアンテナを使用します。医療機器の多くは、通信(ウェアラブル・モニターなど)、撮像(マイクロ波イメージングなど)、治療(高周波(RF)温熱療法など)、充電(インプラントなど)と、アンテナを幅広く使用しています。また、ワイヤレス電力伝送や環境発電では、電波を電流に変換するレクテナ・システムの一部としてアンテナが使われています。こうしたシステムは、無線周波数識別(RFID)や近距離無線通信(NFC)の基盤をなすものです。
アンテナの設計
中心周波数、帯域幅、効率、指向性/利得などの仕様を満たすには、アンテナの設計が極めて重要です。しかし、それと同じくらい重要なのがアンテナの配置です。アンテナを置くプラットフォームはアンテナの設置性能に著しく影響を及ぼします。複雑な実環境での伝搬は、受信範囲の問題や、無線システム間の電波干渉(コサイト干渉)を引き起こすことがあります。
アンテナ・シミュレーション
シミュレーションは、実行可能な設計の作成、仕様適合のための最適化、設置性能や RF 暴露の解析など、アンテナの開発と統合における全段階で活用できます。SIMULIA アンテナ合成・電磁界シミュレーション・ツールは、アンテナ・エンジニアが求めるあらゆる用途に対応します。
無線アンテナ・システム
SIMULIA 電磁界シミュレーション・ツールは、アンテナと並行してフィードやコンポーネント(同調回路、フィルター、マルチプレクサ、導波管など)の設計にも使用できます。詳しくは、マイクロ波と RF のシミュレーションのページをご覧ください。
アンテナの設計・シミュレーションに関するワークフロー
- 選定
- 設計ウィザード
- 3D シミュレーション
- アレイ・シミュレーション
- インピーダンス整合
アンテナの選定
無線システムを成功に導く最初のステップは、用途に適したアンテナの選定です。アンテナのタイプは多岐にわたり、資料には常に最新の設計が載っているため、現在の案件に最適なアンテナを探すのが難しいことがあります。SIMULIA Antenna Magus は、アンテナ・データベースの検索と探索ができるツールです。
アンテナ設計ウィザード
SIMULIA Antenna Magus の設計ウィザードは、求められる仕様と寸法に適合するアンテナ・タイプを自動的に提案し、指定した周波数帯域に同調するシミュレーション対応モデルを作成します。また、CST Studio Suite、WASP-NET、Fest3D などの SIMULIA 合成ツールは、アンテナおよびフィードの専門的な用途に対応する強力な自動設計ツールを備えています。
3D アンテナ・シミュレーション
CST Studio Suite を使って、三次元空間でアンテナ設計の変更や解析を行えます。フィードなどの素子の追加や材質の変更も可能です。最適化を通してアンテナ性能を微調整 できるほか、カップリング効果や寄生効果を考慮に入れることができます。ユーザーは、遠方界放射パターン、指向性、利得、S パラメータなどの標準的なアンテナ KPI のほか、5G などの用途向けに定義された特別な KPI を計算できます。近傍界も計算でき、エクスポートすればアンテナ配置シミュレーションで発生源として使用できます。
アンテナ・アレイ・シミュレーション
CST Studio Suite のアレイ・ウィザードを使って、アンテナ・アレイを作成できます。個々の素子から、無限のアレイとして最適化し、最終的に有限の 3 次元アレイとしてシミュレーションを実行するまで、設計の全段階を 1 つのワークフローに統合することで、アレイ・モデルを迅速に作成できます。極めて大規模なアレイも、高性能で迅速にシミュレーションできます。
アンテナのインピーダンス不整合
通常、アンテナはより大きなモジュールの一部で、アンテナの性能は、フィード、レドーム、グラウンド・プレーンなど他の素子の近接効果の影響を受けます。 アンテナをモジュールに取り付けることで生じるこのインピーダンス不整合は、整合回路で補正できます。シミュレーションを実行することで、どの同調回路の値で最も高い性能に達するかを特定できます。
- 高給電コンポーネント
- 設置性能
- 干渉効果
- 認定
高給電コンポーネント
大電力を使用する用途、特に宇宙空間のような真空環境では、マルチパクター効果とコロナ効果によってフィードが損傷を受けることがあります。 シミュレーションを通して、熱効果などの故障モードが作動する可能性を特定し、打ち上げ後もアンテナが安全に動作するようにします。
アンテナの設置性能解析
プラットフォーム効果も重要な検討項目です。 アンテナが取り付けられているプラットフォームが、電波の反射、回折、吸収を引き起こし、アンテナの性能に影響を及ぼすことがあります。一方、アンテナとプラットフォームの金属部分の結合(カップリング)によって離調が生じることもあります。シミュレーションを実行することで、小型で構造が複雑なもの(ノートパソコンやスマートフォン)から電気的に大型のもの(自動車、航空機、電波塔)まで、あらゆるプラットフォームの設置性能を計算し、最適なアンテナ配置を特定できます。
コサイト干渉解析
道路やオフィス、工場などの複雑な環境もシミュレーション可能です。多重伝搬や推定受信範囲を現実のシナリオに照らして評価できます。コサイト干渉とアンテナ感度低下も、シミュレーションを通して解析し、影響を緩和できます。アンテナ・システム間の干渉は CST Studio Suite Interference Task で解析します。潜在的な電磁干渉(EMI)リスクを確認しやすく、リスクの迅速な軽減に役立ちます。
シミュレーションを通した認定
電磁波の送信機能を備えるすべての機器は、電磁障害(EMI)や人体の RF 暴露などの問題に対応する、安全規制の各種認定を受けなければなりません。 シミュレーションはリアルな人体モデル内部の電磁場パターンを示し、比吸収率(SAR)などの RF 暴露 KPI を、実際に測定するよりも効率的に計算します。
連邦通信委員会(FCC)をはじめとする各機関は、測定値に代わる手段としてシミュレーション・データを受理し、数多くの認定目的で採用しています。 アンテナのバーチャル・プロトタイプを作成し、シミュレーションを使って検証する方法は、物理的な試作品を作る従来の工程に比べて時間とコストを節約できます。結果がわかるのも数時間後や数日後と速く、数週間、数ヵ月と待つ必要はありません。問題があった場合も、迅速に解決してシミュレーションを再実行できるため、プロジェクト終盤で試験に合格できないという手痛いリスクを軽減できます。
さあ、始めましょう
アンテナ設計・シミュレーションの世界は、テクノロジーの進歩、革新的な方法論、発展を続ける産業需要によって変わりつつあります。SIMULIA で一歩先を行きましょう。今すぐご確認ください。
アンテナ設計ソフトウェアに関する FAQ
最もシンプルなタイプのアンテナとされることが多いダイポール(双極子)アンテナは、長さが等しく軸対称に配置された 2 本の導体素子で構成されます。ダイポールの動作周波数は比較的狭帯域です。動作周波数はアンテナの長さで決まり、標準的なダイポール・アンテナは波長の半分を長さとします。
ただし、フリンジング界が生じるために実効長は波長の半分よりも長くなり、共振周波数は物理的長さが示唆する周波数をわずかに下回ります。ダイポール・アンテナは中央部で信号を印加することで動作し、2 本の素子が放射する電磁場は、大部分がダイポールに直交する方向に形成されます。ダイポールが全方向で軸の平面となることで、長さが波長の半分のダイポールの、特徴的なドーナツ型の放射パターンを作ります。
アンテナは、誘導された電磁信号と自由空間の電波伝搬の間の界面で動作します。通常は、供給された信号の分離と空間移動を可能にする導電性構造を有します。また、同じアンテナで電磁場を受信し、電流や電圧として出力することもできます。放射パターンは優先的放射方向を決定します。
アンテナ設計は、電気工学の複雑で難しい領域です。理論的原理、数学的モデリング、実際的検討事項、これら 3 つが相互に作用するために、困難が生じます。また、アンテナの設計には、電磁理論、伝搬特性、具体的な申請要件に関する深い知識が必要です。ただし、専用のアンテナ設計ソフトウェアを使用することで、アンテナ設計エンジニアの負担は軽減されます。
Antenna Magus は、アンテナの設計とモデリングの工程をスピードアップするソフトウェア・ツールです。350 種類を超えるアンテナのデータベースから、要件に最も適したアンテナ・モデルを簡単に選択できます。
アンテナの基本的要件のマッチングから……
Antenna Magus は、リファレンス・データに照らして検証済みの、信頼性の高い一次設計を提供します。各アンテナを徹底的に調査し、設計アルゴリズムを各種試験や検証作業にかけて、多種多様な最終目標の組み合わせに対して、正しく動作することを確認します。
利得、ビーム幅、帯域幅、インピーダンスなどの目標を満たすアンテナを、ボタンを押すだけで設計できます。
設計したアンテナを瞬時に解析する「性能の見積り」機能を使えば、ある素子が最終設計に対して適切な選択肢となるかどうかの指標が得られます。
…… 3D 電磁界シミュレーション向けのアンテナ・モデルの定義まで
Antenna Magus のエクスポート機能を使うと、シミュレーション・ソフトウェアを習得する必要がなくなり、アンテナ設計に多くの時間を充てることができます。新しい概念や設計アイデアを、思いついたときにさっとテストできます。Antenna Magus からエクスポートされるモデルは、すぐに使えるパラメトリック・シミュレーション・モデルです。ユーザーは、インポート側の 3D 電磁場(EMF)シミュレーション・ツールの機能を効率よく適用できます。モデルを組み合わせて新しいトポロジーを迅速に実現できます。
その他の情報
SIMULIA のソリューションの詳細
組織の規模の大小を問わず、シームレスなコラボレーションと持続可能なイノベーションに、当社のソリューションがどう役立つかについて、SIMULIA の担当技術者がご説明します。
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