粒子力学シミュレーション
電磁場における粒子シミュレーション
真空電子素子、粒子加速器、その他
SIMULIA シミュレーション・ポートフォリオは、自由運動粒子と電磁場が相互に作用する素子をシミュレートできる、さまざまなソルバーで構成されています。ポートフォリオのこの部分には、CST Studio Suite と Opera の安定したテクノロジーが使われています。
荷電粒子力学シミュレーションは、各種荷電粒子装置の解析と最適化に不可欠です。粒子寿命のシミュレーション・プロセスは、粒子の放出で始まり、静電加速や静磁場収束など粒子が暴露される効果を再現します。さらに、外場を作るこれらの装置は、高精度の定常シミュレーションを用いて慎重に作られています。エネルギーが非常に高いところでは、相対論的運動方程式も考慮しなければなりません。
粒子シミュレーションでは、粒子が作る電磁場を空間電荷と見なし、外部の電磁場と重ね合わせることができます。自己電磁場は過渡的成分を生み出し、粒子自身に作用が返ってきます。そこで必要になるのが、完全に自己無撞着的な PIC (Particle-in-Cell: セル内粒子)シミュレーションです。
粒子エネルギーを高めるため、粒子ビームを RF 電磁場に暴露すると、電子ビームは超相対論的極限である光速に近づきます。粒子ビームは、電磁場や、自己または後続のビームに作用するウェーク場を作る電流とみなされます。さまざまなビーム光学素子がビームを誘導します。
CST Studio Suite と Opera には、荷電粒子装置の設計に使えるツールが複数用意されています。一般的な静電磁場ソルバーや低周波電磁場ソルバー以外に、粒子追跡ソルバー、電磁 Particle-in-Cell (Es-PIC)、標準 Particle-in-Cell (PIC)ソルバー、ウェーク場ソルバーがあります。これらは、粒子源、磁石、キャビティ、アブソーバなど、さまざまなビームライン部品の設計に使われます。
粒子力学シミュレーションは、真空電子機器の設計においても重要です。マグネトロン、ジャイロトン、クライストロン、移動波管増幅器は、CST Studio Suite で設計できるコンポーネントの例です。マルチパクション効果やコロナ効果などの破壊効果をシミュレートできます。また、マルチフィジックス・シミュレーションによって、高出力マイクロ波の熱効果や機械的効果も考慮に入れることができます。
粒子力学用途
- 粒子加速器
- 粒子源と電子銃
- 真空電子装置
- プラズマ
- マルチパクターとコロナ
- マグネトロン・スパッタリング
粒子加速器
加速器の構成部品
キャビティやビーム位置モニターといった加速器構成部品は、Eigenmode ソルバー、Transient ソルバー、または Frequency Domain ソルバーで設計するのが一般的です。ただし、ビームとの相互作用の解析には Wakefield ソルバーが汎用的に使えます。CST Studio Suite ソルバーの詳細については、こちらをご覧ください。
図は、TESLA 加速器の 9 セル・キャビティです。電子ビームの全伝播中に、加速器に沿ってビームの加速を維持することが目標です。高周波(RF)電力を生成して TESLA キャビティに結合すると、これらの電磁場がキャビティ内に確立されます。キャビティを通過する電子が加速し続けるには、電磁場に対して正しい位相関係を維持する必要があります。それ自体が強い電流である電子ビームは、キャビティ内を移動する間に高周波電磁場を誘導し、ウェーク場と呼ばれるモードを励起します。このウェーク場が、加速プロセスを制限したり、妨害したりする可能性があります。Wakefield ソルバーは、これらの磁場を計算し、加速器の構成部品の設計を改善するうえで役立ちます。
ビーム光学系
粒子加速器は、磁石と電極で粒子ビームの方向付け、調整、制御を行います。代表的なビーム光学部品には、ビームを収束する磁石と静電レンズ、ビームを曲げたり逸らしたりするデフレクター、ビームをリダイレクトするキッカー磁石、粒子を安全にとらえるコリメーターとコレクターがあります。
SIMULIA のツールである Opera と CST Studio Suite は、永久磁石、DC/AC 双極磁石、四重極磁石、高次磁石、アンジュレーター磁石、ソレノイド磁石など、あらゆるタイプの加速器用磁石を支障なく設計するために使われてきました。粒子追跡ソルバーは、仮想電磁場を通過する粒子の運動を、空間電荷効果がある場合とない場合とでシミュレートします。
Opera は、超電導磁石が急激に常電導状態に遷移するクエンチ現象を含め、低温超電導体と高温超電導体の両方をシミュレートできます。複数種の荷電粒子のそれぞれに、ユーザー定義の電荷と質量を設定することができます。
粒子源と電子銃のシミュレーション
電子銃
電子銃は、X 線管から進行波管増幅器まで、工業、医療、研究分野のさまざまな用途で使用されている粒子源です。通常は分散範囲を制限した精密なビームが必要ですが、電子間に空間電荷反発がはたらくため、電極を入念に設計しなければビームが分散する傾向があります。
CST Studio Suite と Opera の粒子追跡ソルバーを使うと、電子銃内部で電場を通過する電子の運動をモデリングできます。空間電荷モデルは、電子間の反発と、その結果生じるビームの分散をシミュレートします。エンジニアはビーム挙動を正確にシミュレートして、信頼性の高いビームを生成できます。包括的なマルチフィジックス・シミュレーションでは、電磁気に加えて熱と応力を調査できます。
カーボン・ナノチューブ・エミッター
カーボン・ナノチューブ・エミッターは、量子力学的な場の効果を利用し、少ない電力で室温(冷陰極)の電子を放出します。そのサイズから、これまでよりも幅広いポータブル装置に使うことができます。Opera では、人気が高まっているこれらの電子源を開発できます。
真空電子装置
進行波管(TWT)などの真空電子装置は、その信頼性と性能の高さから、主に衛星通信に使われています。たとえば、周波数範囲が 1 ~ 60 GHz の場合、増幅信号は最大 500 W の出力に達し、効率は 50% 以上改善します(空間 TWT の場合)。
ソリッドステートのそれとは対照的に、効率性と信頼性に優れ、熱性能が高く、直線性もわずかに向上します。しかし、構築するコストが高額です。このため、TWT が使用されるのは、高電力や衛星のように信頼性が不可欠な場合です。シミュレーションがこれらの設計工程で非常に有効なのは、コストのかかる試作品をいくつも作成する必要がなくなるからです。
PIC ソルバーを使って TWT を設計するときは、らせん構造で遅くした RF 信号と電子ビームの間の相互作用領域、すなわち遅波構造(SWS)を持たせることができます。
RF 信号は入力カプラから供給されます。電子が SWS を通って伝播する間に、電子の運動エネルギーが進行波へと伝えられます。管に沿って進むうちに電子ビームは束になり、電子が進行波に伝える運動エネルギーが失われます。進行波はその後、出力カプラで抽出された最大出力で増幅されます。
プラズマのシミュレーション
プラズマ用途
通常、プラズマ用途の場合は時間尺度が大きく、プラズマは電子とイオンの間の空間電荷相互作用で説明できます。電磁 Particle-In-Cell (ES-PIC)テクノロジーは、静電効果だけを考慮して、時間に対する空間電荷を計算します。標準の PIC アプローチに比べると、電流と H 磁場の誘発はありませんが、このようなプラズマ用途には非常に適しています。また、比較的低圧の空間電荷の力学と衝突で現象を説明できるプラズマ用途において、イオンの温度勾配や流動効果など別の数値的アプローチが必要な条件を考慮しない場合も有効です。
核融合プラズマの動力源
核融合のためのプラズマは非常に高温です。これらはトカマクでつくり出されて、新しいエネルギー生産源となります。核融合プラズマは、世界が直面しているエネルギー問題に対応するために現在調査されている、持続可能なエネルギー源の一つです。未来のエネルギーは、クリーンで安全な制御核融合から生まれなければなりません。
メインの運転モードでは、プラズマは密閉状態になければなりません。これが、トカマクを囲む非常に複雑な磁気コイル設計の役割です。また、熱核反応を維持できるほど十分にプラズマが高温でなければなりません。この役割を担うジャイロトロン装置は、PIC ソルバーを使用して、完全に設計・シミュレーションできます。
ジャイロトロンは高出力真空電子装置で、最大数百 GHz の動作周波数で数百 kW の出力電力を発生させることができます。ジャイロトロンがプラズマ加熱工程に適しているのは、発生するマイクロ波周波数がプラズマ周波数の一つを励起できるからです。マイクロ波はそのエネルギーをプラズマに伝え、加熱工程に至ります。
マルチパクターとコロナのシミュレーション
SIMULIA は、マルチパクター効果やコロナ効果などの特殊な RF 絶縁破壊を、Spark3D テクノロジーに基づき解析できます。こうした効果は高電力マイクロ波構成部品で生じ、高感度機器を破壊することがあります。マルチパクターは、一つの構成部品の不具合が系全体の動作不能につながる衛星通信分野の主な懸念事項です。
調査方法は 2 通りあります。大気圧で稼働する場合は、コロナ効果が優勢になります。一方、ほぼ真空状態の大気圏外では、マルチパクター効果が優勢になります。マルチパクターは、材料特性と、ある電子の衝突が別の電子の放出を引き起こす可能性、いわゆる二次電子放出比により制御されます。マルチパクターが起こるのは、RF 素子の電力が十分に強力で、電子の加速が二次的な電子放出の増加を引き起こし、電子なだれが発生したときです。
マルチパクター効果とコロナ効果は強力な制約であり、RF コンポーネントの設計段階に加えて適格性認証の時点でも考慮する必要があります。
マグネトロン・スパッタリングのシミュレーション
スパッタ・コーティングは、非常に多様な領域において、薄膜の作製に広く使われています。装飾的な低放射率のガラス・コーティングから、最も過酷な環境で稼働する製品を保護するコーティングまで、その用途は実にさまざまです。蒸着膜特性の最適化とスパッタ・ターゲットの使用は、最終製品の性能とプロセスの経済性にとって極めて重要です。SIMULIA Opera は、高精度な有限要素解析と、プラズマ、スパッタリング、膜蒸着の詳細なモデルを組み合わせて、マグネトロンの設計と最適化に関するこれまでにない実用的なツールとなっています。
さあ、始めましょう
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荷電粒子力学シミュレーションに関する FAQ
磁場を横切る粒子はローレンツ力の影響を受けます。ローレンツ力は粒子の運動方向に垂直に作用します。粒子の速度やエネルギーは変化しませんが、求心力として円運動を引き起こします。
荷電粒子は、電子銃やイオン銃など、専用の粒子源で作られるのが一般的です。こうした銃は通常、熱電子放出を使って粒子ビームを生成します。銃は特殊材料でできており、十分に加熱されると電子を放出します。電子は陽極に向かって加速します。よく知られている例として、ブラウン管があります。
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