生体電磁気シミュレーション
電磁場と人体の相互作用を解析
生体電磁気学とは
生体電磁気学(BioEM)は電磁(EM)場と人体の相互作用を対象とする分野で、イメージングや治療に用いられるさまざまな医療機器の研究において重要なトピックです。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの各種規制機関が安全規則を定めているように、電磁場と人体の相互作用は、医療分野に限らず、スマートフォンから電気自動車まで、実に幅広い分野から注目を集めています。人間の体は複雑な構造体で、電磁や熱などの周波数依存特性を持つ、さまざまな物質で構成されています。こうした複雑さに対処するには、専門的なモデリング手法とシミュレーション手法が必要です。
CST Studio Suite 電磁/マルチフィジックス・シミュレーション・ツールは、人体に関わる電気工学的課題に取り組むエンジニアを支援します。 強力な設計ツールとリアルな材料モデルにより、電子機器と人体の両方の詳細を把握できます。人体という複雑な環境の電磁場を、高性能ソルバー・テクノロジーがすばやく正確にシミュレートします。
人体の電磁場
人体という複雑な構造物には、詳細なシミュレーション・モデルが必要です。SIMULIA ソフトウェアは、ポリゴン(CAD)とボクセル、両方の人体モデルをサポートしています。ツールの中でポーズをつけて、リアルな試験シナリオを準備できます。SIMULIA には、シミュレーションに使える、さまざまな体型の人体モデル・ファミリーが付属します。
CST Studio Suite シミュレーション・ソリューションには、精度の高い生体熱モデルも含まれています。私たちの手法は、血流や代謝熱などの体温調節効果を計算に含めて、電磁場が人体をどのように温めるのかをリアルにシミュレートするというものです。
生体電磁気シミュレーションの例
- 医療機器・医薬品分野の生体電磁気シミュレーション
- ハイテク・産業機械分野の生体電磁気シミュレーション
医療機器・医薬品分野の生体電磁気シミュレーション
磁気共鳴映像法(MRI)、マイクロ波イメージング、ジアテルミーなどは、いずれも電磁場を利用する医療機器です。 たとえば、高効率・高解像度の MRI スキャナーを研究開発する場合は、静磁場や高周波パルスなど、幅広い周波数帯域に複数の電磁場が重なり合うことで、人体分子との複雑な相互作用が生じるという概念を理解する必要があります。
電磁界シミュレーションでは、電磁波が人体を伝わって広がり、目的とする治療効果や、あるいは望ましくない副作用という形で細胞組織と相互作用するところをモデリングします。装置のエンジニアと医師は、エネルギーが人体にどのように吸収されるのかをシミュレーション結果から正確に把握し、設計や治療プロトコルの妥当性を検証することができます。シミュレーションは、たとえばスキャン中のインプラントの安全性(ペースメーカーなど)を確認したり、高周波(RF)ジアテルミー治療中の加熱パターンや安全な出力レベルを計算するための手段として活用できます。
SIMULIA の MRI シミュレーションでは、個々のコイルや制御回路を患者と一緒にモデリングし、スキャン手順一式のシステム・シミュレーションを実行します。スキャン手順をシミュレートすることで、MRI 技師は実際の人体構造を確認しながらコイルを調整し、最適な画像を得ることができます。
用途:
- MRI
- RF/マイクロ波イメージング
- ジアテルミー(透熱療法)、ハイパーサーミア(温熱療法)
- インプラントの安全性
- 装着/埋め込み可能な電子機器
ハイテク・産業機械分野の生体電磁気シミュレーション
無線周波数やマイクロ波周波数では、電磁波が人体にあたって反射や屈折、吸収を起こす場合があります。スマートフォンやスマートウォッチなどの携帯・ウェアラブル端末では、こうした相互作用が性能に関わる大きな原因となります(手の位置でアンテナ性能が大きく変わるなど)。
安全規制により、一般消費者向け機器や産業用機器の多くは、高周波暴露に制限が設けられています。一般消費者向け機器については、この暴露は比吸収率(SAR)(機器の使用中に体内組織に吸収される電力の測定単位)で定量化されています。 その他、高出力トランスミッターや航空宇宙レーダーなどの分野にも同様の放射線障害(RADHAZ) KPI があり、電力線や無線充電ポイント近辺における低周波電磁場の人体暴露が懸念されています。
生体電磁気シミュレーションは、物理的な試作品を作る前に、人体に近い機器の性能解析や潜在的な問題の緩和に役立ち、後になってコンプライアンス違反が判明した場合の手痛いリスクを軽減できます。SAR などの KPI は自動的に計算され、指定制限値を超えると即座にハイライト表示されます。
用途:
- スマートフォンやワイヤレス機器
- ボディ・エリア・ネットワーク(BAN)
- 手や体からの信号を遮断
- 5G 対応
- SAR
- レーダーと通信の RADHAZ
- 低周波電磁場の暴露
- 労働安全
生体電磁気シミュレーションに関する FAQ
比吸収率(SAR)とは、人体が無線周波数電磁場にさらされたときに吸収するエネルギー量の測定単位です。1 キログラムあたりのワット数(W/kg)を単位とし、携帯電話、ノートパソコン、タブレットなどのワイヤレス機器への暴露に関連する潜在的健康リスクの評価に使われます。CST Studio Suite は、全身 SAR (機器が体から遠い場合)と局所 SAR (放射源が体の近くにある場合)のソリューションを提供します。局所 SAR の計算方法は該当する規格によって異なりますが、CST Studio Suite では、組織量 1 g または 10 g で平均した局所 SAR を計算できます。
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