Antenna Magus Calculators
Antenna Magus Toolbox でアンテナの設計を簡素化
Antenna Magus Toolbox
Antenna Magus Toolbox には、アンテナの設計者が日々の設計業務を簡素化できる、便利なツールとユーティリティが一式そろっています。こうしたツールは、[アンテナ特性(Antenna Properties)]、[システム計算(System Calculators)]、[推定(Approximation)]、[データ変換(Data Conversion)]、[一般特性(General Properties)]、[伝送線路計算(Transmission Line Calculators)]で分類されています。
- データ変換
- システム計算
- 伝送線路計算
- アンテナ特性
- 反射鏡
- 一般特性
Chart Tracing Tool
Chart Tracing Tool は、Antenna Magus で最も便利なユーティリティの一つです。もともとは社内アプリケーションとして、スキャンしたグラフから設計値を読み取るために、エンジニアが使用していたものです。当時は公開論文をスキャンすることがほとんどで、保存形式は PDF かハードコピーのみでした。他のエンジニアにこのツールを見せたところ、非常に喜んでいたため、ユーティリティの一つとして Antenna Magus に追加することにしました。
使い方は簡単。スキャンしたグラフ画像を選択し、アンカー値を指定して、マウスでトレースをなぞるだけです。スプライン関数か線形関数を適用したら、XY 値をタブ区切り形式(TSV)のファイルにエクスポートします。極座標系と直交座標系の両グラフに対応しています。
Chart Tracing Tool は指示したデータ型に関連する値を自動抽出するため、データの帯域幅やサイド・ローブのレベルなどの数量の判定が容易になります。これらの値は、設計や仕様改良に利用できます。
Chart Tracing Tool の使い方の詳細をご確認ください。
Angle Conversion Calculator
この計算ツールは、角度の値を複数の単位系の間で変換します。以下の表は、度変換に使用される係数を示します。
変換元 | 乗算係数 |
度 | 1 |
ラジアン | 180/π |
グラード | 360/400 |
分 | 1/60 |
秒 | 1/3600 |
ミリラジアン | 180/(1000*π) |
回転 | 360 |
Length Unit Conversion Tool
この計算ツールは、長さの値を複数の単位系の間で変換します。以下の表は、メートル変換に使用される係数を示します。
変換元 | 乗算係数 |
マイクロメートル | 1e-6 |
ミクロン | 1e-6 |
ミリメートル | 1e-3 |
センチメートル | 1e-2 |
メートル | 1 |
キロメートル | 1e3 |
ミル | 25.4e-6 |
インチ | 25.4e-3 |
フィート | 0.3048 |
ヤード | 0.9144 |
マイル | 1609.344 |
dB-V-P Ratio Tool
この式は、デシベル値、線形電圧比、線形電力比の関係を示します。この計算ツールは、次の 3 つの方法のいずれかで使用します。
- デシベル値を指定すると、線形電圧比と線形電力比が返されます。
- 線形電圧比を指定すると、デシベル値と線形電力比が返されます。
- 線形電力比を指定すると、デシベル値と線形電圧比が返されます。
dB = 20log10 (電圧比) = 10log10 (電力比)
Two-Port Network Conversion Tool
この計算ツールは、二端子対回路パラメータ間の変換を行います。二端子対回路パラメータには、Z (インピーダンス)、Y (アドミタンス)、ABCD パラメータ(チェーン)、S パラメータ(散乱)があります。
マイクロ波の場合は、ほとんどの教科書(Pozar 著など)に、さまざまな二端子対回路パラメータ変換に使用できる便利な換算式が記載されていますが、ただし、簡単な変換例しか記載されていない本も少なくありません。具体的には、端子 1 (信号源)と端子 2 (負荷)のインピーダンス値が実数の例、等しい例、または共通端子とシステム・インピーダンスが強制されている例です。
この計算ツールでは、Dean Frickey が作成した方程式を使用して、2 つの端子のインピーダンスを一意の複素数にすることができます。図は、標準の二端子回路網と基本の二端子方程式を示しています。
VSWR Return Loss Calculator
電圧定在波比(VSWR)、反射係数(Τ)、反射減衰量、不整合損失は相互に関連し、その関係は方程式で表すことができます。
この計算ツールは 4 種類の設計グループで構成されます。各グループで目標値を 1 つ入力すると、残り 3 つの値が返されます。
Friis Transmission Equation Calculator
この計算ツールは、フリスの伝達公式を任意の変数で計算します。フリスの伝達公式は、(自由空間で)一定距離内に置かれた 1 対のアンテナの、受電用アンテナが受け取る電力と送電用アンテナが放射する電力とを関連付けるものです。フリスの基本公式を修正することで、アンテナの不整合、伝搬媒質による吸収、ケーブル損失など、さまざまなシステム係数を含めることができます。Antenna Magus の計算ツールでは、アンテナの不整合の影響を計算できます。偏波や物理的なずれを補正するものではありませんが、それぞれのアンテナの利得に使用される数値を調整することで、それらを考慮に入れることができます。
Radar Range Equation Tool
この計算ツールは、広く知られているレーダー距離方程式を任意の変数で計算します。レーダー距離方程式は、レーダー受信機が受け取る電力と次のものを関連付けます。
- レーダー送信機が送り出す電力
- 目標のレーダー反射断面積
- アンテナの利得
- 周波数
- アンテナと目標の間の距離
この計算ツールで使用されている数式はバイスタティック・レーダーにも使えますが、偏波の不整合や、ずれたアンテナの利得補正は考慮されていません。
Signal to Noise Ratio Tool
信号対雑音比(SNR)は通信リンクの検出条件の一つです。基本的には、求められる信号と暗騒音のレベルを比較したものです。1:1 を超える比率は、雑音よりも信号が多いことを示します。
このツールで使用されている方程式を図に示します。方程式で使用されるパラメータは次のとおりです。
- 送信電力(Pt)
- 送信アンテナの有効面積(Aet)
- 受信アンテナの有効面積(Aer)
- 送信機-受信機間の距離(r)
- 波長(λ)
- 帯域幅(B)
- ボルツマン定数(k)
- システム温度
たとえば、次のパラメータを入力した場合の信号対雑音比(SNR)は 72.78e-3 です。
- 送信電力: 1 mW
- 動作周波数: 1 GHz
- 送信アンテナの有効面積(AET): 78.53 cm2
- 受信アンテナの有効面積(AER): 100 cm2
- アンテナの距離: 10 km
- システム帯域幅: 30 MHz
- システム温度: 290 K
Passive Remote Sensing Tool
電波望遠鏡はリモート・センシング装置です。地上に設置された望遠鏡は、天体を観測するために上空を向いています。一方、航空機や衛星に搭載された望遠鏡は地球を向いています。このツールの方程式は、望遠鏡が検出した放射は観測対象物を基点とすると仮定します。これをパッシブ・リモート・センシングと言います。
このツールは温度(計測値または対象物の温度)を計算し、次のような各種リモート・センシング用途に対応します。
- 地上設置の電波望遠鏡による、星間雲を通した天体のリモート・センシング
- 衛星搭載の電波望遠鏡による、森林を通した地球のリモート・センシング
- 受信機によるアンテナ出力の検出(伝送線路経由)
System Temperature Calculator
アンテナは受信システムの一部です。受信システムは一般的に、アンテナと受信機、それらを接続する伝送線路で構成されています。システムの温度は、受信システムの感度や信号対雑音比を決定する重要な要因です。
このツールで使用されている方程式:
方程式で使用されるパラメータは次のとおりです。
- アンテナの雑音温度(ケルビン)(Tan)
- アンテナの物理温度(ケルビン)(Tap)
- アンテナ効率(Ea)
- 伝送線路の物理温度(ケルビン)(Tlp)
- 伝送線路効率(El)
- 受信機の雑音温度(ケルビン)(Trn)
以上から算出されるシステム温度(ケルビン)(Tsys)
Communication Downlink Calculator
通信衛星は宇宙の無線中継局として機能します。通信リンクは、地上の局間で確立することも、他の衛星のアンテナ間で確立することもできます。
システムの能力を高める方法の一つは、帯域幅(bw)を増やすことです。帯域幅を増やす方法として、周波数の再利用があります。搬送波対雑音電力比(CN)が一定の場合、受信範囲(Acov)を減らすことで帯域幅を増やせます。電力を複数のビームに分割するマルチビーム・アンテナは、受信範囲を減少できます。
この方程式で使用できるパラメータはこの他に、衛星の送信電力(Pt)、地上局のアンテナ実効面積(Ar)、システムの等価温度(Ts)、付随的ロス(Li)があります。
Microstrip Line
この計算ツールは、指定した物理的性質に対するマイクロストリップ線路の電気特性、またはその逆を特定します。計算では、金属の厚さの影響が考慮されます。
Coaxial Cable
この計算ツールは、同軸ケーブルのインピーダンスの特定や、入力パラメータに対する内径または外径の計算を行います。また、単位長あたりのキャパシタンスやインダクタンスなど、その他の伝送線路パラメータも計算します。
Coplanar Waveguide
この計算ツールは、指定した物理的性質に対するコプレーナ導波路構造の電気特性、またはその逆を特定します。計算では、金属の厚さの影響が考慮されます。
Grounded Coplanar Waveguide
この計算ツールは、指定した物理的特性に対する接地コプレーナ導波路構造のインピーダンスを特定します。
Circular Waveguide
この計算ツールは、定義済み円形導波路の最初の 5 つの基本モードについて、カットオフ周波数、波動インピーダンス、誘導波長を特定します。
円形導波路の基本モードは TE11 モードです。図は、相対カットオフ周波数を基本の TE11 モードのカットオフ周波数に正規化しているところです。
Rectangular Waveguide
この計算ツールは、定義済み方形導波路の最初の 5 つの基本モードについて、カットオフ周波数、波動インピーダンス、誘導波長を特定します。
方形導波路の基本モードは TE10 モードです。このモードのとき、インピーダンスは導波路の幅に完全に依存します。図は、相対カットオフ周波数を基本の TE10 モードのカットオフ周波数に正規化しているところです。
Gain / Beamwidth Converter
この計算ツールは、指定したビーム幅に対する近似利得、またはその逆を算出します。正確な利得を算出するには数多くの要素が必要ですが、この計算ツールではおおよそのガイドラインが把握できて便利です。垂直ビーム幅と水平ビーム幅の両方を別々に指定できます。
Gain from Aperture
この計算ツールは、指定した面積と効率から開口面の推定利得を算出します。方程式を反転して、他のパラメータの解を取得することもできます。たとえば、ホーン・アンテナの開口効率を計算できます。
Antenna Efficiency Tool
全体的なアンテナ効率を見るときは、アンテナの入力端子、および構造内部での損失(ロス)を考慮に入れます。一般的に次のような損失があります。
- 伝送線路とアンテナの間の不整合による反射
- I2R 損失(導体、誘電)
このツールは、次の式を使用して全体的なアンテナ効率を算出します。
e0 = er ecd
ここで
e0 = 全体的なアンテナ効率
er = 反射(不整合)効率 = (1 - |Τ|2)
ecd = アンテナの放射効率
Τ = アンテナの入力端子における電圧反射係数 [Τ=(Zin- Z0)/( Zin- Z0)ここで Zin = アンテナ入力インピーダンス、Z0 = 伝送線路の特性インピーダンス]
Antenna Radiation Efficiency Tool
全体的なアンテナ効率を見るときは、アンテナの反射損失、導体損失、誘電損失を考慮に入れます。誘電損失と導体損失は計算が難しいため、多くの場合は測定します。しかし、測定の場合も 2 つを分離することは困難です。これらを合わせた損失が放射効率です(ecd)。放射効率とは、放射抵抗(Rr)に届く電力と、放射抵抗および導体-誘電抵抗(RL)に届く電力の比率です。
- ecd = アンテナの放射効率
- Rr = 放射抵抗
- RL = 導体-誘電損失の合算を表す抵抗
Antenna Temperature Calculator
物理的温度が絶対零度を上回る物体はすべて、エネルギーを放射しています。等価温度は、放射されたエネルギーの量を表します。
一定の物理的温度(Tp)に保たれたアンテナが、ある長さの伝送線路(L)を経て受信機に接続され、定温(To)と均一減衰(α)という条件を持っているとき、物理的温度 TAP を考慮に入れて、受信端子におけるアンテナの事実上の温度 Tant を算出できます。
方程式で使用されるパラメータは次のとおりです。
- Tant = 受信端子におけるアンテナの温度(K)
- Ta = アンテナ端子におけるアンテナの雑音温度(K)
- TAP = アンテナ端子におけるアンテナの温度(物理的温度を考慮)(K)
- Tp = アンテナの物理的温度(K)
- α = 伝送線路の減衰係数(Np/m)
- εA = アンテナの熱効率
- L = 伝送線路の長さ(m)
- To = 伝送線路の物理的温度(K)
Realized Gain Calculator
アンテナの実利得は、全体的なアンテナ効率と指向性を考慮して算出します。
全体的なアンテナ効率を見るときは、入力端子での反射による損失と、構造内部での損失を考慮に入れます。
全体的な効率 e0 は図のように記述します。
ここで、er は反射(不整合)効率、ed は誘電効率、ec は導体効率で、誘電効率と導体効率は 1 つのエンティティとして測定されるため、通常はまとめて ecd とします。全体的な効率は図のように記述します。
実利得は、全体的な効率と指向性を用いて図のように算出します。
実利得と指向性は dBi で指定し、電圧反射係数は dB で指定し、効率は 0 から 1 の間の値で指定します。
Aperture Distribution Calculator
この計算ツールは、いわゆる軸対称のパラボラ反射鏡のトポロジーにおける、開口とフィードのおおよその分布をプロットします。次の要素に基づき、フィード/開口の分布を特定します。
- 指定した焦点距離から得られる形状モディファイヤ(P)
- 直径比(F/D)
- エッジのテーパー(ET)
- 開口/フィード分布効率(ade / fde) [Rahmat-Samii]
この図は、形状モディファイヤ P がフィード/開口の分布に及ぼす影響を示しています。
主反射鏡の特性により、フィードでの分布は開口での分布とは異なります。パラボラ・アンテナの F/D 比に応じてグラフは変化します。開口またはフィードの効率は、「理想」とされるフラット分布を基準に算出されます。
Pattern Approximation Tool
一部のパラボラ反射鏡アンテナやフィード・アンテナでは、この便利なパターン推定ツールを用いて利得パターンを計算できます。このツールを使うと、シミュレーションに時間がかかる大型反射鏡の、利得とパターンの理論上の性能を検討することができます。ブロッキング比やフィード分布効率などのパラメータが及ぼす影響を予測することもできます。
たとえば、ブロッキング比がパターンに及ぼす影響を、シミュレーションを実行せずに検討したいときに使います(図を参照)。
次のパラメータは定数です。
- 動作周波数: 10 GHz
- D (反射鏡の直径): 200 mm
- F/D 比: 0.34
- ET (エッジテーパー分布): -35 dB
- Fde (フィード分布効率): 70%
主反射鏡の特性により、フィードでの分布は開口での分布とは異なります。パラボラ・アンテナの F/D 比に応じてグラフは変化します。開口またはフィードの効率は、「理想」とされるフラット分布を基準に算出されます。
Radar Cross-Section Calculator
物体のレーダー断面積(RCS)とは、等方散乱において後方散乱電力が受信されるときの、入射電力密度を妨げる実効面積を指します。この推定では、偏波が一致することを前提としています。
この計算ツールは、入力した各種の目標値に対し、物体のレーダー断面積(RCS)を返します。
この計算ツールでは、周波数、受信電力、送信電力、パス距離合計、アンテナ開口面積を指定して、簡易式から物体の RCS を特定します。
アンテナは、受信した電力の一部がアンテナ端子に供給されるという、独特な RCS 特性を備える物体です。インピーダンス整合をとることで再放射が抑えられるため、RCS が低減します。
Skin Depth Calculator
表皮深さは、導体内の電気伝導を測る尺度です。DC (0 Hz)のとき、電流は導体断面全体に等しく分布しています。周波数が上がるにつれて電流分布は変化し、電流密度が最も高いときには、導体の表面近くに集中します。
表皮深さ δ は、周波数、導体の比透磁率 μr、抵抗率 ρ (または導電率 ο、ここで ο = 1/ρ)の関数です。電流密度が導体表面地点の電流密度の 1/e (≈ 0.37)に減衰する、表面からの深さとして定義されます。
ここで
δ: 表皮深さ[m]
μ0: 真空透磁率[H.m-1]
ρ: 抵抗率[Ω.m]
ο: 導電率[S.m-1]
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