これまで車両の熱設計は、熱風洞での試作品のテストや多数の熱電対を用いた路上走行テストに大きく依存してきました。こうしたテスト方法には高額な費用と多くの時間を費やす必要があり、柔軟性にも欠けています。テストには熱電対計測が含まれ、テスト・エンジニアは熱の問題が発生する可能性がある状況を演繹的に推測する必要があります。しかし、床下の乱流特性によって予測は非常に困難であり、まったく予測できないこともあります。再設計と再テストを繰り返す手法は、試行錯誤のプロセスでコストがかかります。その場合、最終的に最高温度の場所を特定できないことも珍しくありません。乱流の本質的な非定常性を風洞で視覚化することはほぼ不可能です。しかし、構成部品を最適な場所に配置し保護するためには、こうした複雑な構造を理解する必要があります。超高温になる部品の場合は特に、周囲の流体における熱伝導、熱ふく射、熱対流の複雑な相互作用が温度に反映されますが、これを正確に予測するのは極めて困難です。
車両開発プロセスのスピードアップと改善を求める声が市場で高まっている今、車両設計の初期段階で部品温度予測し判断する効果的な方法が必要なのは明らかです。このため、部品温度予測の問題を解決できるよう、関連する物理特性を捉える高忠実度のシミュレーションが必要になります。