汚れ・雨水対策向けPowerFLOW

 

粒子追跡

 

車両が路上で接触する物質は空気だけではありません。水、雪、氷、泥、石、その他の破片がタイヤや風で跳ね上げられたり、天候の影響で車体に当たったりすることがあります。路上で発生する可能性ある過酷な自然条件に耐えられるよう車両を設計する必要があります。こうした細かい粒子の動きは、車両の空力に大きく影響されます。粒子が車体表面に当たるか、吸気口やその他の開口部に吸い込まれるまで、走行中の車体外側の空気の流れが車両付近にある粒子の動きを左右します。高い安全性、高性能、高品質を確保するための多くの機能は、空気の流れ方と粒子の動きによって決まります。泥はね: 汚れや石などの固形粒子が車体に与える影響を把握し、車体の仕上げや構成部品へのダメージを防止する必要があります。同時に、窓ガラスや外部ミラー、外部カメラ、ライトが可能な限り汚れないようにしなければなりません。ホイール付近は、泥の混ざった水滴が跳ね上がる方向を制御し、車体の重要箇所に付着する汚れを少なくするよう設計されます。ホイールとブレーキ:ディスク・ブレーキ表面に泥や水が侵入しないようにする必要があります。さらに、ブレーキを使用すると微小なブレーキの粉塵粒子が発生し、ホイール・リムに汚れが付着します。こうした問題は、ホイール・リムの形状、スプラッシュ・シールド、エアフロー・ガイドを使用して粒子の付着を制御し緩和することが可能です。雪の付着:降雪時の運転では、車両の空力で雪の粒子の付着状況が大きく変わります。小さな剥離のような乱流によって、粒子が特定の箇所に付着します。この結果、粒子が吸気口を塞いだり、窓ガラスや外部ミラーの視界を妨げたり、車体外側のランプを覆ったりするほか、ワイパーの性能にも影響が出ることがあります。車両の形状を調整することで、こうした乱流をスムーズな流れに変え、雪が付着しないようにすることが可能です。エンジンルームへの粒子の侵入と汚れの付着:車のホイールや他の車両が跳ね上げた水や汚れ、さらに空気中の水滴、雪、埃は、エンジンやエンジンルーム内のシステム性能を低下させます。このため、吸気口は、清浄な空気を取り入れ、吸入する空気に含まれる粒子をフィルタリングや分離することで失われる圧力を最小限に抑えるように設計されています。また、粒子が付着すると、エンジンルームの可動部分(ベルトやファンなど)の性能にも影響が出ます。粒子の付着や侵入を制御するエアフロー管理は、グリル、床下、エンジンルームの構成部品やその配置の設計を左右します。

技術面での課題

Aピラーやサイド・ミラー、その他の車体形状を決定する場合、汚れや雨水対策と同時に、車両の空力と空力音響についても検討が重ねられます。水、泥、雪、ブレーキ・ダストなどの外来粒子の付着をできるだけ防止するには、車体表面や構成部品をきめ細かく設計する必要があります。一般的に、こうした種類の性能評価には、非常に精巧な試作品が必要です。しかし、それは設計プロセスの最終段階にならないと完成しません。最終段階で問題を解決しようとすると、エンジニアリングのやり直しや装備の入れ替え、部品の追加などで莫大な費用が発生します。粒子の付着や侵入の主な防止対策(車体表面の形状やエンジンルームのレイアウトなど)に関する情報は、設計の初期段階で確認する必要があります。精巧な物理的試作品を作る前に、レイン・ガーターや吸気口などの詳細な部品設計の影響を理解することで、目標とする性能と安全性を備えた車両を設計することができます。

空力シミュレーションを利用すると、必要な情報を得ることができますが、実際にシミュレーションするのは容易ではありません。空気中や表面での粒子の動きに影響を与える形状のデータが必要になるからです。粒子の流れは非定常の乱流効果の影響を受けやすいため、空気流と粒子の軌道の正確なシミュレーション技術が求められます。

 

SIMULIAソリューション

PowerFLOWは、空力および粒子の流れをシミュレーションし、目標とする車両の設計内容を評価するためのソリューションです。PowerFLOWを使用すれば、空気流のシミュレーションを行うことができます。PowerVIZで空気流の結果を解析し、それをもとに空気流に粒子を動的に放出して、車体表面に粒子が付着するまでの軌跡を計算できます。粒子の衝突点と密集度が記録され、蓄積する解析が行われます。さらに、粒子が表面で弾かれエンジンルームや車体表面に複雑な軌道ができるように、表面属性を定義することもできます。粒子追跡シミュレーションでは、スクリーンまたは熱交換器を通じて粒子の流れをリアルに捉えることができます。このように機能を組み合わせて、汚れ・雨水対策に必要なさまざまな現象を調査することが可能です。