航空宇宙産業では、こうした課題の解決策をCFDに求めています。シミュレーションは、風洞実験や飛行試験に先立ち、準備段階や構想設計段階で実行できます。設計代案を評価できるため、風洞実験に比べ柔軟に低コストで行うことができます。またCFDは、少なくとも理論的に、風洞の据え付けやスケールによる影響を克服することが可能です。
しかし、従来のCFDツールでは、高揚力翼の高い非定常性と複雑な流れを正確にシミュレーションすることができません(最大揚力の予測は特にそうです)。翼全体のメッシュを作成するには何週間もかかり、大幅な簡略化が必要なうえ、ソリューションの精度に与える影響も把握できません。また一般的に、シミュレーションでは定常状態を解析するため、実世界の非定常性による重要な影響は考慮されません。特に、広範囲に分離した非定常流が揚力性能を左右する場合の大きな迎え角は解析されません。