PowerFLOW:空力効率

 

効率性を求めて

現代の経済環境では、燃費のよい車両に対する消費者の需要がかつてなく高まっています。車両の空力設計は燃費に大きな影響を及ぼします。車両の形状に対する風の抵抗を減らし、エンジンルームを通る冷却流れの要件に関連する損失を削減できるためです。空力設計は、車両の初期構想設計から始まります。それは、スタイリングの意図、乗客のスペース、構成部品のパッケージングに関するニーズを満たすための形状とバランスに基づくものです。車体の形状を改良していく中で、角度、半径、寸法といった形状のパラメーターにより空力効率を高めることができます。通常、これらのパラメーターを改善しても、スタイリングの美しさには最小限の影響しか及びません。車両の設計が進むのに応じて、スポイラー、ホイール・デフレクター、床下のカバーなどのパネルとデバイスが、主に空力面での利点を高めるためにサイズ調整され、配置されていきます。これは、部品のコストやその他の制約に対処するためです。こうした設計段階すべてを通して、熱交換器に対する十分な冷却流れを維持する必要があり、それと同時に関連する風の抵抗を最小限に抑えなければなりません。

各設計段階で車両メーカーが直面する課題は、設計の改善方法に関する情報を緊急に必要とすることです。空力に関する情報は高コストで取得が難しく、従来は、車両の詳細モデルまたはプロトタイプを作成して、それを風洞内でテストしていました。製品開発のこの後期段階での設計反復作業には時間もコストもかかります。なぜなら、モデルに大規模な変更を加えることや、風洞テストで詳細なプロトタイプのサーフェス・フィーチャーに変更を加えることが困難であるためです。空気力学の観点からのプロトタイプ・テストは、車両開発コストと設計のサイクル時間を増加させる大きな要因となっています。

技術面での課題

空力シミュレーションが車両開発プロセスを変化させ、車両開発コストと設計のサイクルタイムの両方の削減を実現します。シミュレーションは物理的なテスト手法よりも本質的に優位にあるため、設計の性能に関するフィードバックをより多く開発の各段階に取り込み、設計者とエンジニアが空気力学により設計の外観のバランスを飛躍的に向上させることができるようにします。シミュレーションは物理的なテストよりも正確です。なぜなら、設計の初期段階の物理的な縮小モデルでは表現できないことがある細部を取り込むことができ、風洞の壁や床からの干渉を受けずに実際の道路状況を複製することができるからです。物理的なテストは、精度の問題により、コストのかかるミスと遅延を引き起こしかねません。最後に、シミュレーションにより、部品や費用を追加する必要がない設計の初期段階で設計の改善点を明らかにすることで、最終車両のコストを削減できます。シミュレーションは、コスト削減と最終設計の改善を可能にします。

設計に関するフィードバックの正確性と時宜にかなった提供に対するニーズから、空力シミュレーションの質に大きな期待がかけられています。シミュレーションでは、多数の実際の効果や高忠実度のリアルな形状を考慮する必要があります。道路状況、回転する車輪、乱流や突風などの接近する流れの条件といった、現実的なテスト条件を再現し、非定常の空力乱流のリアリスティック・シミュレーションを実行します。PowerFLOWは、空力シミュレーションに現実味をもたらすための独自のツールです。このツールは地上輸送機器業界全体で厳格に検証されており、設計の意思決定に必要な高精度と確信をもたらします。

SIMULIAソリューション

空力はPowerFLOWによるシミュレーションの柱です。PowerFLOWは、独自の本質的に非定常な格子ボルツマン法に基づく物理解析により、極めて複雑な形状でも実世界での非定常条件を正確に予測できます。各シミュレーションでは、車両周りの空気流、エンジンルームや床下を通る空気流について正確なタイミングで変化を予測します。路上の構成における車輪の回転は、実際の回転形状を使用してシミュレーションできます。冷却ファンを回転させて、正確な冷却流れ条件を表すことができます。熱交換器は流れに適切な抵抗を提供し、空力効率に影響する流れ損失の一因となります。結果の解析により、全体的な空力抵抗、車両の先端から後尾までの抵抗の分布、各パネル全体におよぶ表面抵抗の影響が明らかになります。サーフェスや流れの流線といった流れの視覚化により、設計変更と空力抵抗の間の因果関係を示すことができます。

空気力学、熱マネージメント、空力音響に及ぶ複数領域でのトレードオフに迅速に対処できるのはPowerFLOWだけです。PowerFLOWでこれが可能であるのは、共通の詳細な形状定義を使用したあらゆるタイプの解析に単一の物理特性モデルを使用しているためです。PowerFLOWの結果から、実験に照らして、空気力学やその他の多数のアプリケーションで高い精度を発揮することが確認されています。