ファンの音響性能の試験評価には、物理テストの難しさによる制限があり、通常はスタンドアロンのテスト・ベンチ構成で実行されます。この手法では流れとファンの音響環境を大きく変える傾向があるため、実際のシステムに統合された際に、結果と性能の間に十分な関係性がないこともあります。物理テストでは、騒音源を特定することは非常に難しいか、不可能です。シミュレーションによりこうした困難を克服できる可能性もありますが、冷却ファンからの流れによる騒音に関連する以下のような主要な物理メカニズムを正確に取り込むという課題に対処しなければなりません。
- 本質的に非定常の現象である騒音発生。従来のCFDでは一般的に、妥当な時間フレームで非定常の影響を正確に予測することは困難です。
- 回転翼とその近くにある定常形状との複雑な相互作用が主な騒音源。通常の移動参照フレーム(MRF)手法ではこの効果を取り込むことはできません。
- トーン騒音。特に翼通過周波数と関連している場合、入ってくる流れの質、ローター・ケーシングの相互作用、旋回失速条件の存在、流れ場の不安定性に大きく依存します。
- 広帯域騒音。通常、渦流出、流れの分離、乱流境界層騒音、翼端渦騒音に関連しています。
- 設置の効果。吸気口の流れの状態とシステムの音響反応に影響する傾向があります。
- 近くの対流場の外側での、小さな振幅圧力変動(音響)の放射。