都市騒音/通過騒音向けPowerFLOW

 

静かな走りを目指して

 

自動車や飛行機、電車や重機などによる騒音公害が増え続けていますが、こうした騒音が、近隣住人の健康に悪影響を及ぼすことが実証されています。そのため、多くの国で都市騒音に対し厳しい政府規制が適用されており、航空機や車両のメーカーは、拡大を続ける規制要件に対応しなければならないという重要な課題を抱えています。

騒音制御に取り組むエンジニアは、設計の完成前に、乱流や機械的な振動に起因する主な騒音源を特定しなければなりません。設計プロセスの最終段階で都市騒音規制の遵守判断を行うと、設計変更やテストのやり直しによって莫大な費用が発生したり、製品の認証をリスクに晒したりする可能性があります。

音の発生や伝播のメカニズムを理解する技術は大きく発展しているにも関わらず、その知識にもとづいて音響テクノロジーを改善し、都市騒音抑制の要件を満たすことは容易ではありません。これは、輸送機械・重機産業に残されている大きな課題です。

技術面での課題

騒音防止目標の達成に立ちはだかる大きな問題は、さまざまな設計上の制約を考慮しながら、騒音源を評価し低減することです。多くの場合、物理的な試作品の開発とテストには、多くの時間とコストがかかります。また、実験を行う場合、遠方場に測定を拡大するためには風洞のスペース上の制約があったり、風洞での固定された騒音源の測定値と現実の動く騒音源との関連付けの問題があったりします。このため、コンピュータを活用するソリューションが望ましいアプローチです。

数値音響解析(CAA)手法の大きな課題は、遠方場に伝播される音が圧力摂動で構成される点です。圧力摂動は、近接上の騒音源の乱流の圧力変動と比べ非常に小さい力です。そのため、散逸性と分散性が十分低い非定常流の挙動を極めて正確に予測し、目的の周波数帯で振幅の小さい変動を解析する必要があります。さらに、航空機や電車の認証など一般的な用途では、遠方場の騒音目標に長距離目標が含まれるため、解析領域を拡大し騒音源とレシーバーの両方を網羅することができません。

 

SIMULIAソリューション

PowerFLOWとSIMULIA PowerACOUSTICS遠方場騒音モジュールを組み合わせることで、流動によって生じる遠方場騒音の正確な数値予測が可能なため、航空機、鉄道輸送、回転機械に伴う都市騒音の問題をシミュレーションできます。

SIMULIAの統合型遠方場騒音ソリューションでは、以下の機能を提供しています。

  • 正確な非定常流変動の予測: PowerFLOWの実証済みの予測精度を生かして、空力的に誘発された騒音を予測。時間的に非定常で複雑な形状にも対応します。
  • 完全に連携した遠方場騒音ソルバー:Fowcs Williams and Hawkings(FW-H)理論をベースにした完全統合型のソルバーが、レシーバーやマイクの位置での時間信号を予測します。このソルバーは、飛行騒音/車両通過騒音と風洞シナリオの比較や、固定音と透過音の比較にも対応しています。
  • ファンや回転機械の騒音予測:実際に回転する形状をシミュレーションし、回転部品による圧力変動を予測するPowerFLOWの機能を遠方場騒音モジュールと組み合わせて使用すると、回転機器の騒音防止に最適な解決策を確認できます。
  • 騒音指標とデジタル認証:遠方場騒音モジュールでは、時間領域の圧力信号が出力され、これにユーザー独自の後処理を適用できます。
  • 騒音源の位置情報:遠方場騒音モジュールでは騒音源の要因解析を行い、遠方場に対する影響が最も大きい壁近接領域を明らかにします。出力された遠方場信号をビーム形成や音響ホログラフィーなどのインバース法に入力することで、空間騒音源が特定されます。

SIMULIAの完全な遠方場騒音ソリューションを利用すると、最終試作の前に、初期段階で騒音評価と最適化に取り組むことができます。複雑な形状への対応と効率的な後処理により、設計の初期段階でスピーディに騒音評価を実行し、騒音防止目標を確実に達成できます。