製品ライフサイクルの改善への注目の高まり
気候変動、限りある資源、環境汚染といった地球規模の課題に取り組むために、
製造業は現在の一方通行的な直線型の製造・消費システムを見直し、資源を使いづづけ、廃棄物を最小限に抑えるビジネス・モデルの構築に注力する必要があります。
気候危機が続くなか、製品づくりをどのように適応していますか?
いま起きていること
21 世紀の消費主義を象徴するトレンドの中でも、ファスト・ファッションの台頭には目を見張るものがあります。
最新のデザインを低価格で販売し、新しいコレクションを次々に紹介するというコンセプトに基づき、ファスト・ファッションの先駆的企業 H&M や Zara などがハイストリートを席巻するようになりました。
この現象を実現したのは、現代の製造の基本原則、すなわち、業務の効率化、ジャストインタイムの在庫、迅速なグローバル・サプライ・チェーンに依存する、圧縮された生産サイクルでした。
しかし、こうしたすぐに得られる満足感には代償があります。
世界的なレポート『A new textiles economy : Redesigning fashion’s future』によると、衣類の年間販売量は、2000 年から 2015 年の間で 1,000 億点から 2,000 億点に倍増した一方、廃棄される前の商品の平均着用回数は 36% 減少しました。
再利用されているのは、捨てられた衣類の一部だけです。衣料品の製造に使用された材料のうち、新しい衣料品にリサイクルされるのは1%未満であり、毎年9,200万トンの繊維廃棄物が発生していると推定されます。1,000 億米ドル相当の原材料の損失に相当します。
しかし、この流れは変わりつつあり、業界は製品ライフサイクルの延長に取り組むようになっています。2022 年の McKinsey の調査からは、ファッション業界の経営陣の 60% が、次の年のクローズド・ループ・リサイクルに投資済みかもしくは、投資を計画していることが判明しています。
この信念は、各業界で共有されています。企業は変化の必要性を認識しているのです。ダッソー・システムズのハイテク業界担当バイス・プレジデント、Stephane Sireau は次のように述べています。「業界全体に、スマート・コネクテッド製品のライフサイクル管理の拡張に関する大きな需要があることがわかりました。これには、製品開発段階から運用中の製品全体、さらには再利用、セカンド・ライフ、リサイクルの追跡までが含まれています」
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それが重要である理由
効果的な循環型経済を構築すると、資源の採取方法、製造方法、使用方法の有効性を根本的に改善することができます。World Resources Institute によると、循環型経済活動を効果的に実施した場合、年間の二酸化炭素排出量だけで 37 億トンが削減されます。
その解決策のひとつが新しいリサイクル技術の開発であり、世界中の研究者が、プラスチックの新しいリサイクル方法、二酸化炭素排出量の多いオペレーションの削減、製品の再利用を優先する新たなフレームワークの発見に取り組んでいます。
しかし、技術が利用可能になるだけでは不十分です。メーカーもまた、製品とサプライ・チェーン自体をリサイクル・プロセスしやすい形にする必要があります。
ダッソー・システムズのサステナビリティ担当マーケティング・ディレクター、Jonathan Dutton は次のように話します。「自然は究極の循環型経済です。私たちもそれに対応する必要があります。それには、リサイクル不要で再利用可能な製造方法を見つけるか、さまざまな方法でリサイクルできる製品を作るかです」
プラスチックの場合を考えてみましょう。プラスチックをリサイクルする方法はたくさんありますが、プラスチックの種類によってリサイクルの手順が異なります。ビニール袋と車の内装を同じ方法でリサイクルすることはできませんが、多くの場合、プラスチック製品は複数の材料を組み合わせて作られています。循環型デザインが、こうした課題を考慮します。
たとえば、プラスチックのサプライ・チェーンの循環性という点では、複数の部品に同じ種類のプラスチックを使用するように製品を設計すれば、製品全体を一気にリサイクルでき、分解したり複数のリサイクル手順を踏んだりする必要性が最小限に抑えられます。
「化学物質のリサイクルでも機械のリサイクルでも、プロセスの効果は、取り扱う異なる材料を理解し、うまく組み合わせられるかどうかにかかっています」と Dutton は言います。
循環型社会は、包装から重工業に至るまで、より効率的で最適化された製造工程を導入することでも追求できます。たとえば、鋼の圧延方法を改善することで(鋼自体は二酸化単排出量の多い材料です)、廃棄物を減らし、新しい鋼の生産を減らすことができます。
メーカーが改善方法を会得できれば、大きな報酬が得られます。「材料製品を循環させることで、資源の新たな採取や廃棄物の新たな発生を最小限に抑え、使って捨てるのではなく再利用が前提の経済活動を行うことができます」と、Dutton は言います。
どのように備えるか
循環型経済を基本とするビジネス・モデルへの移行は、リスクが伴う一歩のように思えます。しかし、実装するのは情報であり、それをどう使うかです。
製品寿命全体にわたるバリュー・チェーンや、より持続可能な製品を作る方法、廃棄物を減らす方法、製品寿命を延ばす方法などを把握するうえで欠かせないツールとなりつつあるのが、ライフサイクル解析とも呼ばれるライフサイクル・アセスメント(LCA)です。
Sireau は次のように話します。「LCA は、製品開発の初期段階から製造、サービスに至るまで、自社の製品とオペレーションの二酸化炭素排出量を改善するための方法を企業に提供します。企業は製品のライフサイクル全体にわたって環境影響目標を設定し、関連する KPI を把握しながら、環境への影響を最小限に抑え続け、完璧な顧客体験を提供することができます」
その次のステップは、LCA をバーチャル・ツインのような仮想モデリング・ツールと併用して製品寿命が終わるプロセスを最適化し、循環型経済を普遍的な現実にすることです。たとえば、分解チームは、バッテリーの正確な化学成分を把握して、その成分を安全にリサイクルする方法を算出する必要があります。
LCA は、メーカーが市場に応じて製品リサイクルのシナリオをテストし、それに基づいて製造とロジスティクスのプロセスを設計する場面でも役立ちます。
Dutton は次のように述べます。「ガラス製のボトルについて考えましょう。ドイツはボトルを再利用します。フランスは粉砕して溶かします。つまり、製品とバリュー・チェーンのプロセスは国ごとに設計しなければなりません。LCA を使用すると、こうした詳細を個別に特定し、それに応じて業務を設計できます」
循環型経済を構築するだけでは、完全に持続可能な未来への道が開けるわけではありません。しかし、資源の採取、製造、廃棄のモデルをさらに先へ進め、地球の生態学的境界内で生きることを自然から学ぶことは、不可欠な第一歩です。
自然は究極の循環型経済です。私たちはそれに対応する必要があります。
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