商用車両の循環型EVへのアップサイクル
2023年、メキシコシティのガレージで、エンジニアと地元の整備士からなるチームが、古いディーゼル・トラックを電気自動車(EV)に改修しました。このチームは、トラックの既存の内燃エンジンと部品を革新的な電動パワートレイン、新しい冷却システム、バッテリー、電子機器、シャーシに交換して、数日で新車同様に改修しています。
この取り組みを支えるのは、カリフォルニアを拠点として商用車の電動化輸送技術とバッテリー技術を開発しているEvolectric社です。同社は、CircularEVTMを、ダッソー・システムズ3DEXPERIENCE®プラットフォームで管理して、クリーンかつスマートな改修を低コストで実現して、古い車両に新たな息吹を吹き込んでいます。
Evolectric社の共同創業者、共同CEO兼CFOであるJakson Alvarez氏は、「当社の目標は、CircularEVソリューションで車両の電動化を加速させることです。これは循環型経済の原則と高度なEV技術を組み合わせており、拡張性があり、手頃な価格で、世界中のすべての車両オーナーが利用できます。」と述べています。「世界中の約3億4,000万台の商用車があり、新たなEVに置き換えるのは極めて困難です。代わりに、既存の車両を100%電動化・スマート化して再利用することで、最大限の価値をもたらすことができます。」
既存の内燃エンジン車を置き換える代わりに転換することで、Evolectric社は顧客がコストを節約して保有する車両のライフサイクルを延長する手助けをしています。数十万キロ走行した10年から15年前のトラックを、廃車することなく、可能な限り多くの価値を引き出すことができます。
「商用車の中には、100万キロ以上の走行に耐えられるように製造されているものもあります」とJakson Alvarez氏は述べています。「しかし、ディーゼル・エンジンや内燃エンジン、すべての部品の信頼性が低いため、40万~50万キロで廃車になることが多いです。これを変えることが当社のミッションです。車両を電動化し、キャブやシャシーをリフレッシュして、さらに80万マイル走行できます。」
新しいEVをいちから製造するのに比べ、転換プロセス全体は迅速で、コスト効率が高く、環境にも優しくなります。
「このプロセスにより、新しいEV購入に比べてコストを45%削減できます」とJakson Alvarez氏は述べています。
Nhiura Coaquira氏(Evolectric社セールスおよびマーケティング責任者)は補足します。「軽油燃料の既存のディーゼル・トラックを改修することで、EVトラックの新規製造に比べCO2排出量を50%削減できます。また、従来のディーゼル車に比べて燃料を70%、メンテナンス・コストを50%も削減できます。」
加速する世界のEV普及率
2019年に設立されたEvolectric社は、当初からクラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームを使用して電動化技術を開発しています。同社は現在、革新的なCircularEVソリューションを、コスト障壁やEVインフラの不足によって車両所有者がより持続可能な輸送手段への切替えを阻まれている可能性がある、サービスが行き届いていない市場に展開しています。
Evolectric社の共同創業者、共同CEO兼CTOのBill Beverley氏は次のように述べています。「当社は、顧客が長期的なゼロ・エミッション目標を迅速に達成できるようにしています。既存車両を転換することで、サプライチェーン、開発、検証のボトルネックを回避し、革新的な技術をより早く実際の道路へ投入できます。」
Evolectric社にとって、単に電気自動車やバッテリー・ソリューションを製造するだけではなく、顧客が有意義な変化を達成して、長期戦略に循環型経済の原則を統合できることを目指しています。このような考え方に沿って、同社は自社ビジネスの将来を見据えて、クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームを選択しました。この判断は、創業者がこのプラットフォームを以前使用していた経験があったからというだけでなく、企業のビジネス要件とエンジニアリング要件の両方を長期にわたって達成できるテクノロジーを導入するという、協調的な選択でもありました。
「CATIAによる設計経験はありましたが、3DEXPERIENCE プラットフォーム全体を使用する機会を得て、このツールの圧倒的なパワーを初めて理解することができました。3DEXPERIENCEにより、CADだけでなく、PLMやその他すべての垂直統合を実現できるため、これは妥当な選択でした。また、実際のエンジニアリング・プロセスと同時に、ビジネスのすべての情報を単一のスイートに統合したプラットフォームを利用することが当社にとって重要でした」。
クラウドで電動化サービス・アプローチを全面的にサポート
Evolectric社は、現在および将来の要件を考慮して、3DEXPERIENCE プラットフォームのクラウド展開を選択しています。クラウドを利用することで、オンプレミスのITインフラを維持することなく、必要なツールや機能にオンデマンドでアクセスできます。また、このプラットフォームは、ビジネスの成長やソリューションを提供する国の増加に合わせて拡張できます。
「すぐに利用できるプラットフォームが必要でした。IT管理の別部門とはしたくなかったため、インストールして展開するのではなく、ダウンロードして「GO」をクリックするだけにしたかったのです。クラウド版は期待を上回る効果をもたらしています。導入が容易で現場でも、一緒に仕事をする組織内でも、どこからでもアクセスでき、規模を拡大するのには最適です」。
Evolectric社は、3DEXPERIENCE プラットフォームを活用するために、クラウド・スタートアップ・プログラムを通じて、ダッソー・システムズのバリュー・ソリューション・ビジネス・パートナーであるXD Innovationと提携しました。Bill Beverley氏は、以前の勤務先でXD Innovationと連携して、使用するソフトウェアの選択、生産環境でのソフトウェアの使用方法、連携する企業の選択など、専門知識を得ていました。この経験に基づいて、Evolectric社は、XD Innovationが可能な限り迅速に規模を拡張して前進するための理想的なパートナーであることを認識していました。
「組織のアーキテクチャ計画から仕事をはじめ、ベスト・プラクティスや将来を見据えた成長重視の視点でのツールの使用方法をサポートしてくれる、素晴らしいパートナーです」。
Evolectric社は、クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームを利用してCircularEVを各顧客固有の要件に合わせたすぐに使えるソリューションとして提供しています。実際の導入に先立ち、クラウドですべてが定義され調整されています。
「オンライン・コラボレーションのクラウド環境の構築から始めて、EVソリューションを設計し、テストして、あらゆる修正を追跡しています。このプラットフォームでSIMULIAの高度なシミュレーションを使用して、正確な機械的表現を作成して解析できます。そしてDELMIAで製造プロセスを定義し、部品を製造・梱包して、地域のネットワークやサービスセンターへの出荷を準備できます。このプロセスを顧客が自身で最短2日で導入できます」。
Evolectric社は、クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームに支えられ、世界中の顧客やパートナーネットワークとシームレスにやり取りしています。将来的には、プラットフォームを使用して製品のアップデートを自動的に共有することを計画しています。
Andrew Pontius氏(Evolectric社、製品および戦略的パートナーシップ責任者)は述べています。「クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームは、リアルタイムのアップデートを展開する優れた方法を提供します。将来的には、設計を変更するとクラウドで取扱説明書が自動的に更新されて、パートナーがアクセスできるようにしたいとを考えています。」
前職でCATIAでの設計経験はありましたが、3DEXPERIENCE プラットフォーム全体を使用する機会を得て、このツールの圧倒的なパワーを初めて理解することができました。
バーチャル・ツインによるEV設計とアセンブリーの検証
Evolectric社は、顧客と緊密に協力し、最適な電動化システムと電源を考慮し、車両をディーゼルから電動化に転換する最善の方法を決定します。まず仮想環境で、すべてをテスト・検証します。エンジニアがCATIAで作業しながら、顧客の要件をすべて把握し、システム統合を検証し、すべてがどのように機能するのかチェックします。
「メキシコシティのチームは、CADデータにリアルタイムでアクセスし、CADを操作して取り付け作業の手順やすべての部品の取り付け場所を把握します。古いトラックに新しい部品を組み込み、数週間で走行させます」(Bill Beverley氏)。
実際に車両に作業する前に、Evolectric社は、組立て手順をモデル化し、それぞれの取り付け状況を、可能な限り迅速かつ円滑に取り組むために必要なことを、現地のパートナーに正確に示しています。
「3DEXPERIENCE プラットフォームは、パートナーを育成するという当社計画で大きな役割を果たしています。バーチャル・ツインにより、作業方法を正確に示して、当社と同じ基準で改修手段を示すことができます」(Andrew PontiusPontius氏)。
Evolectric社のすべての意思決定と顧客の電動化ロードマップは、プラットフォームのENOVIAを使用して保存・管理されているデータに基づいています。将来に向けて、ENOVIAにより、顧客のEV車両の性能を監視して、予防保全、機能強化、アップグレードをリモートで実施する計画です。
「現在、当社は技術開発の第二段階に入っており、データが何を物語るかに期待しています。車両は運行中に何をしているのか。データをプラットフォームに取り入れ、新たな要件や知識をツールセットに取り込んで、どう継続的に進化させるかを見ています」。
「充電効率から走行性能に至るまで、車両のオーナーが投資から最大限の利益を得られるよう、車両を高度にスマート化する機会っを提供します。また、新しいVehicle-To-Grid機能やドライバー安全機能を迅速に導入することもできます」(Jakson Alvarez氏)。
グリーンな循環型のモビリティに対する障害を世界中で取り除く
Evolectric社は、これまでのCircularEVソリューションの成功に基づき、手頃な価格で利用しやすいEVへの需要が高まる世界中のより多くの市場に、その技術を導入したいと考えている。将来的には、導入・保守のサービス全般を実施できる現地パートナーのネットワークを構築することを考えています。
「当社は、顧客のニーズを重視するだけでなく、どこでも拡張できる極めて革新的なソリューションを提供しています。メキシコの小さなガレージで地元の技術者と一緒に実現できたことは、世界中のどこでも可能であると確信しています」(Nhiura Coaquira氏)。
Evolectric社は、地域のユーザーが移行を管理するツールや技術を利用できるようになれば、EVの普及が勢いを増すと考えています。EV技術に対する障壁が減り、ビジネスとして理にかなったものであれば、EVの受入れが拡大するはずです。
「転換は昔からありましたが、DIYベースでした。拡張性があり信頼性の高い方法でこれを行うには、地域コミュニティに力を与える当社のようなアプローチが必要です。これが循環型への移行の鍵を握っています。何世代にもわたって商用車を整備してきた整備工場、設備、整備士がそのスキルを次のレベルに引き上げ、当社のキットを使用して部品を搭載して車両を整備できます。ダッソー・システムズのおかげで、真に拡張性のある信頼性が高い、世界中で利用できるソリューションを提供しています」(Bill Alvarez氏)。
00:00 – 00:20
Evolectric社 共同創業者 共同CEO兼CFO Jakson Alvarez氏:
当社は、既存の商用車に新たな息吹を吹き込み、中小規模から大規模の車両オーナーが電気自動車への100%移行とゼロエミッションの達成を支援しています。
00:21 – 00:34
Evolectric社 共同創業者 共同CEO兼CTO Bill Beverley氏:
ラストマイル、ミドルマイルの車両オーナーは、電動化計画を進める必要があります。当社はエコシステムの多くをターンキー・タイプの製品に組み合わせることで、電動化の未来を、極めて簡単かつ短期間で実現します。
00:35 – 00:51
Jakson Alvarez氏:
これには、既存のインフラを活用して、迅速に拡張できるソリューションが必要です。長年にわたって商用車の整備に携わってきたベテラン整備士が当社のキットや技術を利用して、車両を整備することで、スキルセットをさらに次の次元に引き上げることができます。
00:52 – 01:03
Bill Beverley氏:
当社は、デジタル・ツインの構築に注力しています。クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームにより、顧客の施設や運用に実際に投入する前に車両を可視化しています。
01:04 – 01:32
Evolectric社 セールスおよびマーケティング責任者 Nhiura Coaquira氏:
当社にとって、循環型EVソリューションを加速させることは、極めて重要です。既存のディーゼルトラックを改造することで、新しいEVトラックと比較して、製造過程でのCO2排出量を50%削減できます。当社は、技術面や経済性だけではなく、人々の社会的、文化的な行動にも大きなインパクトをもたらしていることをとても誇りに思っています。
01:33 – 02:15
Bill Beverley氏:
当社のシステムは、トップレベルの意見に基づいてます。顧客は何を求めているのか?どのようなタイプの機能が必要なのか?どのような要件があるのか?これらの要件をどのようにツールに取り込めば、実際に論理的なアーキテクチャに展開でき、そのニーズに沿ったCAD設計や、要件の追跡、さらにプロセスに沿った検証ができるようになるのでしょうか。3DEXPERIENCE プラットフォームは、当社のテクノロジー構築に伴う、すべてのニーズを取り込むことができるエンドツーエンドのソリューションです。これにより、当社の分散型の組立・製造アプローチを計画・管理するため、基本的にクラウドを利用して各拠点で当社の技術を展開し、製造プロセスを増強できるようにしています。これを実現することが、当社の成長の重要な要素の一部です。
02:16 – 02:24
Evolectric社 製品および戦略的パートナーシップ責任者 Andrew Pontius氏:
3DEXPERIENCEは、当社のコンバージョンベイでパートナーを今後育成する計画において大きな役割を果たします。教えるための最良の方法は3Dの教材です。
02:25 – 02:39
Jakson Alvarez氏:
一例として、メキシコではAnheuser-Busch社と連携していますこのプロセスに関する概念実証を行いました当社のエンジニアや彼らの技術者と協力し、2週間で完成させました。現在、メキシコシティで稼働しており、街中にビールを配送しています。
02:40 – 02:47
Nhiura Coaquira氏:
当社のクライアントからは、使い慣れたトラックの性能と車両のバランスがより改善されたという評価を頂いています。
02:48 – 03:02
Bill Beverley氏:
このプラットフォームを選んだのは正しい判断でした。使い始めて3年半ほどになります。これにより、当社は記録的な成長率を達成しています。
Evolectric社について
カリフォルニア州ロングビーチ本社を拠点とする、Evolectric社は、輸送の電動化およびバッテリー技術に特化した電気自動車関連の技術企業です。南カリフォルニアとラテン・アメリカの企業が主な顧客です。燃料を大量に消費し、大気汚染の原因となっている商用車両を、同社のCircularEVにより、環境に配慮したよりクリーンで持続可能な循環型経済の実現に貢献することが、同社のミッションです。
XD Innovationについて
XD Innovationは、ダッソー・システムズのパートナーとして、3DEXPERIENCEプラットフォームによるクラス最高の技術を提供して、顧客のイノベーションをより効率的にサポートすることに注力しています。同社は、製品開発技術、3D設計、エンジニアリング、モデリング、シミュレーション、データ管理、プロセス管理、品質、コンプライアンス含む、ソフトウェア、コンサルティング、付加価値サービスを提供しています。またコンサルティング型の顧客エンゲージメント戦略と迅速な導入メソッドを活用して、優れたトレーニングとサポートを提供しています。