BIOMODEX社

医師の複雑な処置のリハーサルや高度なトレーニングに対応するバイオリアリスティック・ハプティック・シミュレーターを開発している医療機器メーカーである同社は、クラウドの3DEXPERIENCEを使用して、医療処置中の人体組織のバイオメカニクス特性を正確にシミュレーションする臓器のバーチャル・ツインを設計しています。

迫真のリアリティ

フランスのレンヌ大学病院(CHUレンヌ)は、インターベンショナル神経放射線学をリードする医療センターのひとつです。同院の医師チームは、700人近い患者の脳動脈瘤のモニタリングを行い、年間200人近い患者の破裂・未破裂動脈瘤を治療しています。動脈瘤治療は、複雑かつ時間を要し、合併症のリスクも高い治療です。この治療に役立てられているのが、フランスと米国に拠点を置くデジタルヘルス企業であるBiomodex®社の革命的な技術です。同社のソリューションにより、患者の動脈瘤やその他の特定の解剖学的構造の正確な3Dプリントによるモデルを作成して事前に介入をシミュレーションできるため、個々の患者に最適な機器やアプローチを選択できます。

Biomodex社の社長兼CEO、Ziad Rouag氏は次のように述べています。「当社は、特定の患者の正確なモデルで治療全体をリハーサルする機能です。これにより、医師が実際の手技に取り組む前により適切に準備することができます」

CHUレンヌのインターベンショナル神経放射線科医であるAnthony Le Bras氏は、次のように述べています。「このモデルを手術前のリハーサルに使用することで、機器やアプローチを問題なく適用できるかどうかを事前に判断できます。もし問題がある場合は、より有効な治療法を判断するのに役立ちます。これにより、医師の信頼を高めるだけでなく、手術時間を短縮し、実際の治療中に合併症のリスクを軽減できます」

Biomodex® EVIAS™ステーション&カートリッジによるテスト

Biomodex社は、3DEXPERIENCE®プラットフォームを使用して、3Dプリントによる高度な解剖学的ツインを作成して治療をシミュレーションしています。画像スキャンやその他の診断情報をプラットフォームにアップロードして点群を作成し、血管や臓器の内部を可視化および3Dバーチャル・モデルを構築して、これをバイオメカニクスに対応する先端材料を用いて3Dプリントして、患者専用の「カートリッジ」を作成します。これをシミュレーション・システムにプラグインして、実際の治療と同じように処置することができます。Biomodex社のモデルは、すでに市場に投入されている基本的なシリコン・モデルとは異なり、個々の患者の解剖学的な特徴や触覚フィードバックの現実的なシミュレーションを行います。

Rouag氏は次のように述べています。「Biomodexは、患者の解剖学的構造だけでなく、生体組織の力学的挙動も再現する完全なソリューションを構築してます。この3Dプリント・モデルを使用することで、血管の挙動を可視的/触感的に確かめることができます」

Biomodex社は、革新的な技術とデジタル中心のアプローチを通じて、健康な生活のサポート、ウェルビーイングの促進、持続可能な方法による医療の安全向上に貢献しています。市場に投入済みの最初のソリューションにより、従来の術前準備やトレーニングに代わる革新的なアプローチであることが証明されており、医療従事者が患者をリスクにさらさずに知識と経験を得る方法を変革しています。このアプローチは、複雑な治療に取り組む医療現場のインターンやフェローを指導する方法に変革をもたらしました。

Rouag氏は次のように述べています。「パイロットはフライト・シミュレーターを使って安全な環境でスキルを高める訓練を行っていますが、これと同じようなものが医療業界ではこれまでなかったため、医療機器にもこのようなトレーニング方法が必要だと考えていました」

Hospital Group Paris Saint-Josephの大動脈センター長であり血管外科医学教授でもあるStephan Haulon氏は、次のように述べています。「Biomodexによる3Dプリントを利用して医学生向けに最適なトレーニング・プログラムを構築しています。カテーテル室でいくつかの治療を体験してもらい、学期全体を通じてさらに複雑な処置を行えるようにしています。私の学部では、学生が6ヶ月のローテーションを終えた時点で、実際の症例を観察してカテーテル室で処置を行えるようになっています」

3DEXPERIENCEプラットフォームがなければ、この目標を達成することはできません

Ziad Rouag氏の写真
Ziad Rouag氏
Biomodex社、社長兼CEO

成長に不可欠なパートナーシップ

同社は2015年の創業以来、ダッソー・システムズおよび3DEXPERIENCE Labによる支援を受けています。スタートアップ・アクセラレータ・プログラムは、メンタリング、トレーニング、クラウド版3DEXPERIENCEプラットフォームのアプリケーションの提供で、画期的なプロジェクトを創出および推進しています。

Rouag氏は次のように述べています。「ダッソー・システムズは、開発だけでなく、生産面においても重要な役割を果たしています。事業立ち上げの早期段階において、3DEXPERIENCE Lab、CATIAおよびSIMULIAの設計およびシミュレーション・アプリを導入しました。これにより、多くのエンジニアを採用して、極めて高度なツールやソフトウェアを使用できるようになり、最終的に当社の技術開発を実現できました」

3DEXPERIENCEプラットフォームは、技術プラットフォームだけではなく、すべての最先端機能を開発する環境をBiomodex社に提供しています。

Rouag氏は次のように述べています。「このプラットフォームは、データの取り扱いや複雑さの管理に十分な精度を搭載しています。また、極めて信頼性の高いプロセスの実現に役立っています。例えば、3Dの患者画像をセグメント化してCATIAにインポートすることで、すべてのデータおよび精度を全体を通じて一貫して維持できます。3DEXPERIENCEが、これを可能にしています」

3DEXPERIENCEプラットフォームによって設計された、未破裂動脈瘤用Biomodex® EVIAS™ステーション&カートリッジ

プラットフォームのクラウド機能をすべて利用できることも、Biomodex社にメリットをもたらしています。米国とヨーロッパに拠点を置く同社のチームは、場所に関係なく、クラウドでのシームレスな連携により、効率的な共同作業を行っています。また、Biomodex社では、すべての従業員が常に職場に出勤する必要はなく、リモートワークが許可されているため、リソースのバランス調整およびオフィス稼働の管理面においても選択肢が多くあります。

Rouag氏は次のように述べています。「クラウド版3DEXPERIENCEプラットフォームは、当社の製造および研究開発プロセスにとって非常に重要です。クラウドは柔軟性と機動性をもたらします。つまり、出勤してオフィスにあるマシンを使う必要がありません。必要に応じて、どこからでも、すべてのアプリケーションやデータにアクセスできます。COVID-19パンデミックの最中、これが非常に役に立ちました。ボストンとパリの拠点で柔軟に働けることが先ず必要であり、バーチャル・ワールドの作業環境を非常に高く評価しています」

現在、Biomdex社は、 3DEXPERIENCE Labを卒業し、自社で全面的なビジネスに取り組んでいます。ダッソー・システムズのパートナーであるD Innovation(XDI)は、すべてのコンサルティング・サービスを継続的に提供しています。

Rouag氏は次のように述べています。「XDIは、ダッソー・システムズのクライアントに移行する過程を非常に積極的に支援してくれました。可能な限り私たちに立ち合って、あらゆる課題を熱心に聞き取ってくれたおかげで、ラボから医療現場への移行中に技術的な変更に対応して課題も解決することができました。今もダッソー・システムズと直接連絡を取る機会が多いですが、XDIのサポートのおかげでオペレーションを新たな次元に進めることができました」

Biomodex transseptal cartridge

リアルな患者解剖学的ツイン

Biomodex社は、数多くのさまざまなタイプの医療処置に対応しているため、優先順位を絞り込む必要がありました。

Rouag氏は、次のように述べています。「まず、多くのトレーニングと準備が必要な最も複雑な処置に取り組むことにしました。これがBiomodex® EVIAS™(EndoVascular Intracranial Aneurysm System)ステーションを最初に立ち上げた理由です。インターベンショナル神経科医は、非常に複雑な画像処理を使用しており、インプラントの適切な適用のために特定の測定が必要です」

Biomodex社は、心臓血管の処置にも取り組んでいます。Biomodex® LAACS™(Left Atrial Appendage Closure System)ステーションは、心臓の小さな部位を封鎖して脳卒中を予防する治療をシミュレーションして、トレーニングおよび症例に対応するリハーサルを提供するソリューションです。

Rouag氏は、次のように述べています。「心臓構造には非常に複雑な多くの処置が必要なため、これに対応するソリューションも開発しています。また、大動脈瘤に対する血管内治療もあります。当社はこれらへの取り組みを優先しています」

3DEXPERIENCEプラットフォームのSIMULIAを利用することで、Biomodex社は3Dプリントされた動脈瘤や臓器のモデルが、治療中にどんな反応をするかシミュレーションすることができます。同社は、SIMULIAを使用して有限要素解析(FEA)を行い、生体組織と同じように、各解剖学的構造の圧力、切開、剥離に対する反応を判断して、脆弱なポイントを特定しています。

Rouag氏は、次のように述べています。「SIMULIAがなければ、実物と同じようなプラスチック部品を作ることはできません。「触覚フィードバックやX線撮影に関しては、患者の解剖学とは異なります。当社は、モデルに合成された多くの臨床情報を適用して、SIMULIAを使用してプリンタ出力する、非常に正確なモデルと再現性を実際に導入しています」

3Dプリントによる可視化は、もはや不可欠です。

Stephan Haulon氏(血管外科教授)
Stephan Haulon氏
血管外科教授、Hospital Group Paris Saint-Joseph大動脈センター所長

重要なのは、個々の患者の特定の領域のコンテキストで正確な触感や挙動を再現する3DプリントモデルをBiomodex社がSIMULIAにより作成できることです。

Biomodex社の技術開発ディレクターであるFrédéric Champ氏は次のように述べています。「これらのモデルを当社のINVIVOTECH®材料の入力データとして使用しています。シミュレーション・モデルの局所的な変形を考慮して、3Dプリント・モデルで再現される材料の分布を最適化しています。カテーテル操作時の身体的感覚や触覚フィードバックをモデルで再現して、医師に対して現実的なシミュレーションを提供することが目的です。例えば、動脈が頭蓋を通過するとき、金属パイプのような硬い感触を受けます」

治療前に新しい機器を現実的な条件でテストする機能により、医療業界および医師の双方が意図したとおりに適合して正確に機能することを確認できます。

Haulon氏は、次のように述べています。「最近、上行大動脈瘤の3Dプリントにより、特定の症例に設計したエンドグラフトが少し短すぎることが分かりました。Biomodexのおかげで、エンドグラフトを変更して、治療に最適なものにすることができました」

実際の手術前にリハーサルを行い、最適な治療を定義することで、医師が有効な準備を行って患者体験をさらに改善できます。

Haulon氏は、次のように述べています。「新しい機器を新たな治療に使用する場合、その適正を確認する必要があり、それがかなり大きなプレッシャーになることがあります。これが、Biomodexと連携している主な理由のひとつです。患者への施術前に、正確な解剖学的構造により、治療全体をシミュレーションできます。医療チーム全員が現実的な手術リハーサルを行うことで、より自信を高めることができます。また、患者さんにも信頼感を持っていただくことができます。3Dプリンタによる解剖学的モデルで治療を予習して機器をテストしていることを伝えることで安心感を持ってもらえます」

Biomodex社、パリ拠点

世界トップレベルの医療トレーニング

Biomodex社は創設当初から、医療専門家と緊密に連携して、何が必要とされているのか、またソリューションがもたらすメリットを正確に把握しています。

Rouag氏は、次のように述べています。「医師の意見を聞き、行われている治療について知ることが、当社のビジネスを成功させるために不可欠です。当社には臨床を重視する文化があり、私はそれを誇りに思っています。実態のない仕事は何ももたらしません」

このような医療関係者との密接な協力関係により、Biomodex社は、医師や医学生が他の方法では実践できない治療トレーニングを考案しています。

Haulon氏は、次のように述べています。「Biomodexとのパートナーシップが、トレーニングや新しい治療の展開に大きな変革をもたらしています。3Dプリントによる可視化は、もはや不可欠です」

Rouag氏は、次のように述べています。「脳血栓が見つかった場合、すぐに治療する必要があります。事前にトレーニングすることはできません。例えば、これらの治療を経験の浅い神経インターベンション医が学ぶにはどうすればよいでしょうか?この種の治療を模倣する方法がなかったため、コントロールされた環境下で、さまざまなシナリオにより、この処置を学習できるモデルの開発が当社に依頼されました。開発結果を世界有数の神経インターベンション医に見てもらったところ、満面の笑みを浮かべて「さぞ大変な仕事だったでしょう」と答えてくれました。これ以上の褒め言葉はありません」

Biomodex社のビジョンは、医療従事者が複雑な治療を計画する方法を完全に革新して、医療トレーニングやリハーサルの第一選択肢のソリューションになることです。

Rouag氏は、次のように述べています。「高度な技術により、この種の治療トレーニングを当社と同じように提供できる企業は他にはありません。当社は一歩先を歩んでおり、今後もそうありた続けたいと考えています。

3DEXPERIENCEプラットフォームがなければ、この目標を達成することはできません」

Biomodex logo

Biomodexについて

パリとボストンに拠点を置く医療技術企業であるBiomodex®社のミッションは、医師のトレーニングや手術リハーサルの方法のトランスフォーメーションです。同社は、バイオリアリスティック触覚フィードバックを提供する高度な材料を用いて、解剖学的モデルの3Dプリントを提供しています。次世代のバイオリアリスティック触覚シミュレーターは、完全にカスタマイズ可能であり、特許取得済みの血流システム、経食道心エコー(TEE)や心腔内エコー(ICE)などの医用画像ツールと統合されています。これにより、実際の治療と同じような経験を通じてスキルを高めて、患者の転帰を改善する新しい医療機器や技術の導入を促進できます。

詳細情報: www.biomodex.com

XDIロゴ

XD Innovationについて

XD Innovationは、ダッソー・システムズのパートナーとして、3DEXPERIENCEプラットフォームによるクラス最高の技術を提供して、顧客のイノベーションをより効率的にサポートすることに注力しています。同社は、製品開発技術、3D設計、エンジニアリング、モデリング、シミュレーション、データ管理、プロセス管理、品質、コンプライアンス含む、ソフトウェア、コンサルティング、付加価値サービスを提供しています。またコンサルティング型の顧客エンゲージメント戦略と迅速な導入メソッドを活用して、優れたトレーニングとサポートを提供しています。

詳細情報: https://xdinnovation.com/