あらゆるもののサービス化
企業は製品を販売するのではなく、製品に関するサービスを販売するようになってきています。しかし、製造業はこのようなビジネス・モデルの急激な変化に対応できるでしょうか?
常時利用可能なサービスの準備はできていますか?
いま起きていること
昔の商売は、お客さまが商品を購入して所有し、寿命が終わったら廃棄するというものでした。しかし、このビジネス・モデルは次第に人気を失っています。
その代わり、第 4 次産業革命とそれに伴う IoT、データ、接続性の台頭により、商品の販売や管理、製造サービスに対する新たなアプローチが生まれています。それが「サービス化」です。消費者は次第に、ひとつだけの製品を購入するのではなく、その製品の提供者と製品寿命全体を通した関係を築き始めています。
たとえば、車や設備を購入する場合、古いビジネス・モデルでは、資産を所有し、修理や補修部品の交換を定期的に依頼していました。サービス化では、そのビジネス・モデルがパーソナライズされた商品を継続的に監視し、製品に関するサービスを提供するという形態に変わります。 メーカーは顧客の要求に対応しやすくなり、ベンダーは継続的な収益源を生み出すことができます。
これは小さな動きではありません。Grupo Milan の調査によると、2023 年までに産業機械メーカーの 20% を EaaS (Equipment-as-a-Service、 Everything-as-a-Service)が占めるようになり、リモート産業用 IoT 機能がほぼゼロの状態から増加することが示唆されています。
顧客にとっては、先行投資を抑えて機能性の高い機械を利用できるなど、EaaS のメリットは甚大です(Netflix 風のサブスクのモデルと考えてください)。サービス経済化のビジネス・ケースも顕著です。McKinsey の調査では、アフターマーケットのサービスの平均利益率は約 25% であるのに対し、新製品の販売はわずか 10% であると、示唆しています。
「新しい機械そのものではなく、機械の設置と、その後 20 ~ 30 年間の付帯サービスから得られるアフターセールス収益が増え続けています」と、ダッソー・システムズの産業機械業界担当副社長 Philippe Barticles は言います。
ダッソー・システムズのインダストリー・マーケット・アナリスト・ディレクター、Sophie Proust は次のように述べています。「以前は、メーカーが機械を購入し、それで終わりでした。機械のサービス化では、EaaS サプライヤーが機械を継続的に監視し、生涯の性能を向上させることができます。お客様はより良いサービスを受けることができ、機械の作業員は新しいビジネス・モデルを利用できます」
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それが重要である理由
産業機械のサービスの拡大は、産業エンジニアから消費者まで、業界全体に影響を及ぼします。 ダッソー・システムズのパッケージ製品・小売業およびホーム・ライフスタイル業界担当バイス・プレジデント、Philippe Loeb は詳しく説明します。「フットウェア業界を考えてみましょう。靴を購入するときは、ぴったり合う靴を求めますが、どんなに良質の靴でも、破けたり、サポート性が悪くなったりします。そのため、別の靴を購入し、その後でまた別の靴を購入します。消費者にとっては無駄であり、良い経験ではありません。サービス化は、この状況を変えようとしています」
しかし、こういったビジネス・モデルの激変は、事業を適応させなければならず、製造業は、これがもたらす無数の圧力を認識し、対処方法を知る必要が出てきます。
Loeb はロジスティクスの例を挙げます。「サービス化では、輸送精度の大幅な向上が要求されます。企業が本格的にサービス化モデルを実践する場合、その変更が業務にどのような影響を与えるかを適切に理解する必要があります」
販売方法も変わる可能性があります。ダッソー・システムズの3DEXCITE 担当 CEO、Tom Acland は、設備購入分野における販売業務の変化の傾向に注目しています。「EaaS では、専門的な営業チームが現場を訪問するという接触頻度の多い販売パターンから、自動化が進んだ接触頻度の低いプロセスへと変化します。つまり、新しい販売が必要となります」
保守の質も向上します。バーチャル・ツインの場合は、稼働中の機械の状態に関する大量の情報を絶えず更新できるため、作業員は機械の微妙な点を把握し、予防保全などの手段にも関わることができます。
サービス化寄りのビジネス・モデルへと移行することを検討している製造業は、次のような懸案事項に直面します。どのような産業機械のソリューション を提供可能か? この変化に対処するにはどうすればよいか? 施設をどのように準備すべきか? お客様の要望を常に把握できるようなコミュニケーション網を確立するにはどうすればよいか?
Manufacturing Industries on the Edge: Transformation from the inside out
製造業がイノベーションを受け入れられるために何ができるかを確立したうえで、今度は、技術を獲得した製造業に何ができるか。そして技術を利用してリスクに対処し、新たな価値を追求するため、何ができるかに目を向けましょう。
どのように備えるか
EaaS バリュー・ネットワークを結び付けるのは、データです。注文に従って製造し、その後継続的に更新する製品の場合、お客さまのデータに簡単にアクセスできる必要があります。顧客データを基盤として、サービス化されたビジネスを構築しなければなりません。
ただしデータ中心のモデルの構築することは、データの整合性に関する懸念に対処が必要です。カスタマイズ食品業者に健康指標を入力する場合でも、業務の設計図を設備メーカーと共有する場合でも、顧客にはすべてにプライバシーとセキュリティーを求める権利があります。
「EaaS では、共有するデータの量が増加します」と Loeb は言います。「個人データの保護方法、顧客が共有を望む情報だけを共有可能にする方法、そのデータの用途を通知する方法について、慎重に検討する必要があります」
そのため、今後数年間は、安全かつコラボレーション可能な方法で、すべてのデータを管理するためのデジタル・ツールに取り組むことになるでしょう。必要なデータを一つの共有プラットフォームに統合することで、顧客とサプライヤーの双方が、一元管理された情報を基に作業を行えるようにするとともに、必要な情報のみを共有されるように特定のデータ・プールを囲い込む「ウォールド・ガーデン」の作成が可能になります。機密性を確保し、プライバシーを保つために何が必要であるかは、きわめて重要です。
Loeb は次のように述べています。「企業のビジネス・モデルへの影響は甚大になります。当然ですが、ビジネスのサービス化は劇的な変化です。しかし、適切に行えば、サービス・レベルと収益モデルを大幅に改善できます」
ビジネスのサービス化は劇的な変化です。しかし、適切に行えば、サービス・レベルと収益モデルを大幅に改善できます。
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