全てのデータを一つに統合できる3DEXPERIENCEプラットフォーム上で設計を行うことで、機体の全ての部分系統を、極めて優れ、明解で、無駄や欠点のない構成に保つことができます。
環境に配慮し、航続時間の長い自律型ドローン
航続距離、飛行速度、巡航高度のいずれにおいても、技術の進歩と革新的な先駆者たちの取り組みが、長年にわたって航空機製造の限界を押し広げてきました。さまざまな限界の中でも、航続時間が、研究者と航空機設計者の課題となっています。
「ドローン業界が成長するには、2つの大きな課題があります。ドローンの低い自律性と、安全基準です」とXSunの創業者、CEOであるBenjamin David氏は述べます。この2つの課題を解決するために、David氏は自身の原点である航空宇宙業界での経験から着想を得ました。具体的には、自律型で航続時間の長いソーラー・ドローンを設計するために、人工衛星のコンセプトを、より優れた高度計に移植しました。このようにしてSolarXOneのプロジェクトが誕生しました。
太陽電池を搭載し、地上から遠隔操作されるSolarXOneは、効果的で経済的かつ持続可能なソリューションです。SolarXOneのユニークな点は、機体の左右それぞれに2枚の翼が並んだタンデム翼機の形状であることです。この形状により太陽電池の搭載面積を増やし、最大限の飛行性能を確保しています。
さまざまな専門分野をまたいだ連携
XSunの主な課題は、ドローンの複雑なシステムを最適化し、構造、外形寸法、パーツの配置、内部容積などの要件に応じた最良の落としどころを見出すことです。このような研究は、本質的にさまざまな専門分野をまたぐものである為、設計、デジタル・シミュレーション、コラボレーションのための高性能なツールが必要です。「SolarXOneのドローンは、これまで必ずしも連携していなかった、さまざまな科学や専門分野の技術(設計、エンジニアリング、シミュレーション、複合材料、プロトタイピング、テストなど)の塊です」とDavid氏は述べます。
XSunのチームは、ドローンの全体的な構造と、さまざまな部分系統(ランディングギア、プロペラ、バッテリー、胴体部分など)の改良に取り組んでいます。David氏は述べます。「全てのデータを集約できる3DEXPERIENCE®プラットフォーム上で設計を行うことで、機体の全ての部分系統を、他に類を見ないほど優れ、明解で、無駄や欠点のない構成に保つことができます」
XSunの航空力学と航空宇宙熱工学のエンジニア、Andrea Viti氏も、3DEXPERIENCEプラットフォームを日常的に使用しています。Viti氏は次のように述べます。「航空力学の追求には精度が求められます。3DEXPERIENCEプラットフォームは、ドローンのコンポーネントを変更した場合の空力挙動の解析を可能にします。ドローンの全体的な設計をし次第、機体の性能をシミュレーションできることが極めて重要です。ダッソー・システムズのソリューションを活用すれば、何か修正を行った場合に、その修正がドローンの全体的な構造やコンポーネントの配置に及ぼす影響をすぐに確認できます」
ダッソー・システムズのソリューションを活用すれば、修正を加えた際に、全体の構造やコンポーネントが受ける影響をすぐに確認できます。
Viti氏は続けます。「3DEXPERIENCEプラットフォームは、共同で設計を行うには不可欠です。なぜなら、飛行機や航空機は、難易度の高い多くの専門分野から成るシステムなので、一つの専門分野の担当者の決定が、他の部分系統に影響を及ぼすからです」
たとえば、SolarXOneでソーラーエネルギーを制御するプリント回路基板の冷却システムの設計には、熱工学、航空力学、機体のパーツの配置の最適化が必要です。3DEXPERIENCEプラットフォームを活用することで、エンジニアは変更を加える度に、機体全体のバランスを確認することができます。
XSunのテストエンジニアであるDenis Pitance氏は、次のように述べます。「以前、私がプロペラのサイズと位置の設計をしていた時、別のチームが新しいランディングギアの形状について取り組んでいました。3DEXPERIENCEプラットフォームのおかげで、ランディングギアがプロペラに対して好ましい位置にないことがわかりました。このような問題を早い段階で検出できたので、ランディングギアの設計時に適切な修正を加えることができました」
ユーザーを結び付ける
ダッソー・システムズのクラウド版のサービスが、XSunに卓越したアジリティをもたらしています。David氏は述べます。「強力な設計シミュレーションツールにリモートでアクセスできます。プラットフォームは、出先、たとえば提携先など、どこからでも簡単にアクセスできます。このことは、XSunのドローンは簡単にどこにでも飛んでいける、という当社の中心概念と似ています」
Pitance氏もこれに同意して、次のように付け加えます。「ダッソー・システムズのクラウド版のサービスの採用は、当然の選択でした。私は出張が多く、常に同じ場所にいるとは限りません。どこからでもファイルにアクセスできることは、絶対に必要なことでした」
3DEXPERIENCEプラットフォームには全ての従業員が同時にアクセスでき、使用するアプリケーションやドメインに関わらず、絶え間なくコラボレーションを行うことができます。Viti氏は次のように述べます。「私たちにとって、クラウドで作業できることが3DEXPERIENCEプラットフォームの重要なメリットです。私たちにとって真のイノベーションとは、互いに繋がっていることです。誰もがプラットフォームを通して互いの仕事をフォローし、ヘルプやテクニカルサポートを提供し、新鮮な視点をもたらすことができます。また、プラットフォームがとても簡単に使えることも驚きでした。クラウド機能により、遠隔地との連携が容易になり、生産性が高まりました」
ダッソー・システムズのクラウド版のサービスを採用することは当然の選択でした。私は出張が多く、常に同じ場所にいるとは限りません。どこからでもファイルにアクセスできることは、絶対に必要なことでした。
SolarXOneのユニークな特徴である、機体の左右それぞれに並ぶ2枚の翼の適切なプロポーションを見出すことは、困難なタスクでした。David氏は述べます。「一時は、ゼロからやり直した方が簡単なように思えました。しかし、CATIAとSIMULIAを活用することで、たくさんのバージョンについて迅速に、バーチャルなテストを行うことができました。その成果が、現在の設計です」
「私たちは、すばらしい設計作業を行うことができています」 Viti氏は述べます。表面の品質、航空力学、各コンポーネントの全般的な配置など全てが完璧でなければ機体は飛びません。このような完璧な設計を行うのに、CATIAは理想的でした」
機体を物理的に製造する前に、リアルなシミュレーションで設計をバーチャルに検証できる、ということが不可欠です。Viti氏は、流体力学のシミュレーションのために主にSIMULIAを用いており、その強力な航空力学の機能を駆使しています。また、さまざまな材料のモデリング、配線の配置のテスト、風の流れのシミュレーション、構造物の整合性の確認にもSIMULIAを活用しています。「関連する連成解析すべてをかなえる、適切なソリューションを導入することが重要でした。たとえば熱散逸と乱気流は、チームが重点的に取り組まなければならない領域でした。SIMULIAは、最適設計の開発や、設計の各バージョンがどのように機能するのかの理解、物理的なテスト数の削減に役立ちました」とViti氏は述べます。 CATIAとSIMULIAはプラットフォーム上で密接に連動するので、設計が修正されるたびに、シミュレーション・モデルが自動的に更新されます。
3DEXPERIENCE Labのサポートで開発を加速
XSunと3DEXPERIENCE Labの提携が、さまざまな面でSolarXOneのプロジェクトを加速しました。David氏は述べます。「ラボのメンバーとして、3DEXPERIENCEプラットフォームの全ての機能と、専門家のコミュニティにアクセスすることができました。また、メンタリングを通じて技術力を高め、ビジネスにプラスの影響を及ぼすことができました」
Viti氏は、プロジェクト開始当初、3DEXPERIENCEプラットフォームについて知らなかったと語ります。「ラボのおかげで3週間足らずで運用を開始できました。今では、技術的なサポートや問題解決のヒントが必要な場合、常にラボの専門知識を活用しています」
ラボのサポートを受け、XSunはプロジェクトを加速し、技術を高めることができました。Viti氏は述べます。「ラボの優れたエコシステムの恩恵を受けることで、あらゆることを以前より迅速に行うことができます。たとえば、ドローンは複雑なシステムであるにもかかわらず、初期設計を1年未満で完了できました」
XSunと3DEXPERIENCE Labの協働の成果であるドローンは、複合材料で構成され、翼には非常に高い変換効率の太陽電池が取り付けられています。SolarXOneの重量は25kg未満で、翼幅は4.5mを超えます。現在、最低12時間の継続的な自律飛行を誇りますが、将来的には20時間に伸ばすことを目標としています。「25kg未満という機体の重量制限は非常に重要です。これは、ドローンに関する世界各地の新しい規制で定められた重量制限なので、これを満たせば、世界のほとんどの場所でドローンを運用できます」とDavid氏は述べます。
ドローンの潜在的な用途は、科学研究からビジネス、救助活動まで、場所は農業地帯から都市部まで、あらゆる範囲に広がっています。ドローンを活用することで、気象、海洋、地質学的な観測や、大気汚染物質の追跡など、地球科学の研究を促進することができます。防衛・安全保障分野では、国境や海上、森林火災の監視などに用いられる通信中継の構築を行うことができます。ビジネス用途としては、道路輸送や天然資源の追跡、地形調査、精密農業などに利用できる可能性があります。
XSunにとって、ドローンの航続時間を追求することが、研究やイノベーションの強力な原動力です。このような科学技術的な挑戦と、複数の専門分野をまたいだコラボレーション、革新的なソリューションの結びつきが、SolarXOneを技術的に構成する要素となっています。SolarXOneの新しいコンセプトの実用化は、最終的に、観測や通信の分野における民間と軍事の用途にとって、適応性があり即応性が高いソリューションにつながるはずです。
XSunについて
フランスに本拠を置く企業 、XSunは、エネルギーを自給し、自律飛行し、さまざまな分野(森林や海上の監視、人々の安全の確保、通信中継の構築、精密農業など)において完全に自動化されたミッションを行うことを目的としたソーラードローン、SolarXOneを開発しています。
XSunホームページ: www.xsun.fr
3DEXPERIENCE Labについて
3DEXPERIENCE Labは、スタートアップ企業による革新的かつ持続可能な製品づくりとコンセプト開発を促進するためのイノベーション・ラボです。Labの支援対象となったスタートアップ企業は、ダッソー・システムズによる個別のサポートと、クラウド版の3DEXPERIENCEプラットフォームをはじめとする当社のテクノロジーを活用することができます。
詳しくはこちら: https://3dexperiencelab.3ds.com