複雑な建築形状の専門家
マルセイユの高層ビル街でひと際目を引く、フランス海運グループであるCMA CGM本社タワービルは、フランス第2の都市において異彩を放つ建築物です。建築家Zaha Hadid氏の設計による高さ147mのタワービルは、印象的な垂直の幾何学模様、際立ったガラス外壁、先鋭な形状が特徴です。南東側のガラス窓が曲線を描き、タワービルと隣接するビルに直結するブリッジに繋がっています(2,700個の異なるセルを完璧に組み合わせた複雑な構成)。
この印象的な建物のエンジニアリングを担当したのは、複雑な鉄骨構造やファサードのエンジニアリングおよび設計サービスを専門とする、VLP+P社の建設エンジニアの専門家チームです。パドバ、モナコ、ロンドンを拠点とする同社は、ブリッジの形状を定義して建設要件を満たすコンセプトに適合させる設計支援を行いました。CATIAにより、各構成に適応するパラメトリック3Dモデルを開発して、各セルのモデル、施工表、生産データを迅速に再現するプログラミングを作成しています。
「当社は非常に複雑な建築構造を専門としています。ファサードの3Dモデルを扱う、業界で最もスキルの高い1社です。当社の目的は極めて固有であり、常にベストを尽くしています。より大規模かつ複雑なプロジェクトを担当することで、当社は今日の地位を築いてきました。3Dモデリングを専門とする20人のエンジニアと建築家のグループおよび熱エンジニアリングの影響や鉄骨の計算やファサード・クラディング専任の構造エンジニア・チームも管理しています。」(Giovanni Patron氏、VLP+P社共同設立者兼パートナー)
VLP+P社は、「どれだけ複雑であっても、あらゆる建築形状に対する建設ソリューションがある」という信念のもとに設立されました。同社は、複雑さを管理して規則正しく達成できるプロセスを構築して、建設プロセスにおいてクライアントのコスト削減を支援することを目標としています。
「創業以来、当社は複雑なプロジェクトや建物の開発を最適化する新しいソリューションを見つけ出して仕事に取り組み、イノベーションの限界を押し広げてきました。当社は、プロジェクト開発において時間を要するプロセスを減らすことに特に注力しています。当社の専門知識とソフトウェアの機能を組み合わせて、複雑さに取り組んでいます。また、生産コストが上昇する中、生産要件を最適化するソリューションを探し出し、構造物の重量を削減する方法を特定して新たな課題を解決するプロセスや方法を促進しています。」(Patron氏)
さらに複雑な形状の高層ビル建設が増える中、VLP+P社は、類まれな構造物の実現をサポートする役割を果たしています。
「次世代の設計は、より挑戦的かつ審美性の高い建物を建築する、新たなジオメトリの探求に移行しています。世界の各都市を訪れると、奇抜な形状の巨大な建物に目を奪われることがあります。私たちは、それらがどのように建築されたのか考えをめぐらし、同じようなエキサイティングなプロセスの一端を担って進歩を遂げたいと考えています。
VLP+P社は、最善を尽くすために、複雑化するプロジェクトに対応できる業界をリードする技術プラットフォームを必要としていました。創業以来、設計エンジニアリングにCATIAを使用してきた同社は、クラウドの3DEXPERIENCE®プラットフォームを採用することは、理にかなった次のステップと認識していました。
変化が確実に起こっています。当社は新しい異なる方法による取り組みを習得して大きな変革をもたらしています。クラウドは間違いなくメリットをもたらし、確実に未来につながります。
クラウドによる規模の拡大
「最先端のツールを使用する必要があります。より優れたパフォーマンスを発揮し、当社の取り組みを革新するために、3DEXPERIENCEプラットフォームの採用を常に考えていました。大規模なプロジェクトでは、何千もの要素を管理する必要がありますが、このプラットフォームは、すべてのデータおよび情報を一元管理して統合するのに役立ちます。」(Patron氏)
VLP+P社は、ダッソー・システムズのパートナーであり、エンジニアリングの専門家であるイタリアのIDeCOM社と協力してプラットフォームを導入して、そのメリットを最大限に活用する方法を習得しています。
「IDeCOM社は、この役割を果たす最適なパートナーでした。共通言語で意思疎通できるだけでなく、同じ分野で働いているため、当社のニーズを完全に理解してくれます。当社のあらゆる疑問に答え、問題の解決策を見つけ出し、プラットフォームの多数の機能を活用するメリットをもたらしています。」(Patron氏)
VLP+P社はクラウドの導入を選択して、物理的なITインフラの要件に手間をかけることなく、3DEXPERIENCEプラットフォームを即座に稼働させています。また、ニーズの拡大に応じて、プラットフォームの使用を容易に拡張できます。
「当社がクラウドのソリューションを選んだ理由は、サーバーを設定する必要がなく、すぐに使えるためです。クラウドは、ITの必然的な進化であり、常に新しい機能が提供されると同時に改善点が導入されます。どのデバイスからでもワンクリックでクラウドの最新の3Dモデルや必要な情報にアクセスできる利便性に慣れると、もう後戻りできません。」(Simone Lucangeli氏、VLP+P社共同創設者兼パートナー)
新たな取り組み
3DEXPERIENCEプラットフォームにより、VLP+P社のエンジニア・チームは、より柔軟な取り組みおよびクライアントとのシームレスな対話を実現しています。
「クラウドにより、より革新的な方法でクライアントとやり取りして、別の拠点にいるチームが容易に共同作業を行うことができます。出先からすべての必要な最新モデルにアクセスできます。コロナ禍においてリモート・ワークを避けて通れませんでしたが、生産性への影響を最小限に抑えて業務を継続できました。」(Patron氏)
実際、VLP+P社がコロナ禍の前に3DEXPERIENCEプラットフォームを導入していなければ、情報共有がはるかに困難になっていたはずです。
「ある日突然、自宅で仕事をしなければならなくなったとき、このプラットフォームは非常に貴重でした。まるでノートパソコンの中にオフィスがあるような感覚です。私たちが使うモデルは通常、非常に重たく、ギガバイト単位のメモリが必要ですが、プラットフォームにアクセスして、さまざまな場所から同時に同じモデルで作業できます。クラウドからモデルを高速ダウンロードできます。この新しい技術を利用することができたので救われました。」(Lucangeli氏)
コロナ禍は、多くの企業が従来の職場のあり方を見直し、将来に向けてリモート・ワークを導入するきっかけとなりました。VLP+P社は、建設業界において、この変化がさらに広範なトランスフォーメーションの機会になることを期待しています。将来的には、最新のクラウドベース技術をより多くのクライアントやパートナーが活用するものと予想されています。
「変化が確実に起こっています。実際に職場に出勤することが唯一の方法でないことを誰もが認識しています。思いがけない想定外の危機に直面して、私たちは新しい異なる方法で仕事に取り組むことを学び、それが大きな変化につながっています。クラウドは間違いなくメリットともたらし、確実に未来につながります。(Patron氏)
このソフトウェアにより、ジオメトリを取得する自由度を高め、使用する技術や材料に応じて、サーフェスを最適化する手段を開発できます。
サーフェスおよびジオメトリの最適化
3DEXPERIENCEプラットフォームのCATIAが提供する直感的かつ強力なモデリング機能が、VLP+P社のエンジニアによる複雑なカスタム設計の管理をサポートしています。これにより、プロジェクトの元々の目的や価値を損なうことなく、建築家のアイデアと適切な製造技術をマッチングさせることができます。
「CATIAにより、クライアントの基準、プロジェクトの原則やルールに基づいてジオメトリを創出して、数式を最適化および要素間の関係に変換できます。例えば、ブリュッセルのヨーロッパ・ビルに取り組んだとき、円筒形による二重曲面ガラスを最適化して、より低コストかつ容易に製作することができました。しかもクラッディングの最終的な形状は、建築家による設計とまったく同じでした。その他の複雑な設計への取り組みにおいても、最終的な設計を損なうことなく、ツイストするジオメトリをシンプルな円筒形に最適化してコストを削減できます。」(Patron氏)
VLP+P社のエンジニアは、プラットフォームでENOVIAにより、すべてのプロジェクト情報を管理して、以前の設計や解析を参照しながら、新たな設計課題ごとに最適なソリューションを特定しています。
このソフトウェアにより、ジオメトリを取得する自由度を高め、使用する技術や材料に応じてサーフェスを最適化する手段を開発できます。
ガラス繊維強化コンクリート(GRC)パネルにはいくつかの制約があり、ガラスにも制約があるため、これらをサーフェス設計に考慮する必要があります。3Dジオメトリや材料のコーディングなど、あらゆる製法をプラットフォームで管理して、必要なときにいつでもすべての情報にアクセスできます。製品テンプレートを自動化して、既存の設計要素使用または新規作成を決定できます。ENOVIAにより、以前の設計を再利用して同僚と知識を共有してベストプラクティスを定義し、これまでの仕事から学び、新しい複雑な課題を解決するために役立てることができます。すべてが共通のデータ環境内にあるため、重要な情報を容易に入手できます。」(Lucangeli氏)この機能は、建物のライフサイクルおよび変更やリビジョンを効率的に管理する非常に貴重な価値をもたらします。
「複雑な建築を扱うということは、何千もの部品を管理することを意味します。すべての部品のライフサイクルを追跡する必要があります。3DEXPERIENCEプラットフォームの建築構造エンジニアリングを管理するロールは、リビジョンの追跡に極めて役立ちます。」(Lucangeli氏)
未来に向けたBIM構築
イノベーションが今日のVLP+P社を牽引してきました。同社は、最善な結果を達成するために、今後も最新の設計手法および業界のベストプラクティスを採用し続けます。
「現在、パリ市立工業物理化学高等専門大学(ESPCI Paris)のBIMを開発中です。最高レベルの詳細を提供する建設モデルを実現するためにBIMの管理にプラットフォームを使用する予定です。この建物のビジュアル・モックアップを既に開発済みで、すべての建設要件情報をクライアントに提供するファサードのセクションを設計しています。これには現場の図面や部品表などが含まれます。」(Patron氏)
VLP+P社は、この開発がきっかけとなり、より多くのクライアントがBIMを今後採用することを期待しています
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「当社は常に、クライアントとの間で迅速かつ効果的に対話できる最善の方法を目指しており、このプラットフォームは確実にこれをサポートしてくれます。「当社の3Dモデルをクラウドでクライアントと共有できるようになっています。この方法を選んで当社とやり取りして、情報を共有してソリューションを見つけ出すクライアントが増えるはずです。」(Lucangeli氏)
「当社は常に、仕事への取り組み方を革新しています。当社は、ビジネスを開始した当初から3Dで直接作業していますが、今でもまだ業界標準になっていません。当社は3Dを推進して、より多くの当社のクライアントに対して3Dへの移行を働きかけています。」(Patron氏)
VLP+P社について
同社およびそのパートナーは、カーテン・ウォールの3Dモデリング、鉄骨やファサード・クラッディングの構造および熱エンジニアリングに特化した、高度な技術を提供するエンジニアおよび建築家によるチームを構築しています。同社の専門知識は、建築設計の支援、概念設計、建設設計、生産、設置など、建物のライフサイクルのすべての段階に対応しています。またクライアントがプロジェクトの重要なポイントを予測、建設上の課題を分析、設計および建築を最適化するパターンの特定をサポートしています。VLP+P社のプログラミング知識により、複雑な結果を短時間で達成して、プロジェクトの総コストを削減できます。
詳細情報: www.vlpandpartners.com
IDeCOMについて
IDeCOMは、科学およびエンジニアリング機能を組み合わせたサービスのポートフォリオを提供しています。同社のコンサルタント事業のビジョンは、クライアントのパートナーとして革新的なソリューションを実用的なアプローチによって提供し、土木インフラ、エネルギー、不動産部門に価値の高いサービスを提供することです。