新世代のサステナブル住宅
オランダを拠点とするUnbrick社は、その持続可能性への取り組みが認められ、ナチュラ2000(欧州の生物多様性を保護する生息地指令に基づいて設けられた自然保護区のネットワーク)における建設を許可された数少ない建設会社のひとつです。この世界最大規模の自然保護区ネットワークは、欧州の28ヵ国の陸上および海洋に及びます。
Theodore Tonino氏(Unbrick社、エンジニアリング・テクノロジー担当ディレクター)は、次のように述べています。「これらの地区における建築には厳しい規制が課せられています。例えば、製造や建設プロセス中に窒素を一切排出できません。」
Unbrick社は、エネルギーのA++++ラベルも取得しています。「このラベルは、当社が達成できるエネルギー効率に対する最高の証です」とKrijn Smits氏(Unbrick社、ブランド&カスタマー・エクスペリエンス担当ディレクター)は述べています。
Unbrick社は、従来の住宅建設プロセスのあらゆる側面を刷新することで、極めて持続可能な建築を実現しています。
建築業界において、当社のような会社を立ち上げるには、従来の方法では5~8年かかります。私たちは、3DEXPERIENCEプラットフォームと革新的なアプローチを組み合わせて、2年以内でこれを達成しました。
Unbrick社の住宅建設に対する新たなアプローチが、オランダの住宅建築市場を刷新しています。同社は、FSC認証木材などの持続可能な資材を使用して、自社の専用施設でさまざまなモジュール式アセンブリーを製造して現場に搬入しています。Unbrick社の住宅には、必要な電力の2倍を発電するソーラー・パネルが搭載されています。各建物の上下水道システムには、認証済みの持続可能な資材および天然かつ非常に効率的なヘロフィート・フィルターが使用されています。
「当社は、建設プロセスのあらゆる段階を見直して、よりスマートなサステナブル住宅のより迅速な建設を目指しています。このような取り組みができるのは、従来の企業のように足かせとなるレガシーがないためです。」(Smits氏)
先進的な企業には、相応の技術プラットフォームが必要です。Theodore Tonino氏(Unbrick社、エンジニアリング・テクノロジー担当ディレクター)は、次のように述べています。「従来の設計方法には多くの無駄があります。ポイント・ソリューション間でファイル交換が必要であり、多くの手直しが発生します。また、拡張性にも課題があります。シミュレーションを維持する十分な詳細設計情報がなければ、効率を高めることが困難です。当社には、新たなアプローチ、つまりトレーサビリティとアカウンタビリティと同時に拡張性と連携的な設計機能を提供する統合型ソリューション必要でした。」
Unbrick社は、求めるのニーズを満たすソリューションを探し始めました。「多くのソリューションを検討しましたが、当社が求めている性能と拡張性を実現できるものはありませんでした。「ある日、ダッソー・システムズのベルギーの顧客がトラック部品を製造している様子をビデオで目にしました。この顧客が単一のソリューションにより、必要なすべてのデータにアクセスして、ビジネスの成長に合わせてプラットフォームを拡張しているのを見て3DEXPERIENCE®プラットフォームをさらに調査する必要があると判断しました。」(Tonino氏)
このビデオがUnbrick社がビジョンに取り組む、完璧なきっかけとなりました。
バーチャル・ツインの価値を実証
Unbrick社は、クラウド版3DEXPERIENCEプラットフォームを迅速かつ容易に導入して、チームをサポートするトレーニングおよび設計や製造の新たな機会を得るために、ダッソー・システムズの現地パートナーKeonysにアドバイスを依頼しました。KEONYSの専門知識により、Unbrick社のエンジニアは、最適な連携的な設計アプローチを展開して、設計変更に費やす時間を短縮しています。製造現場では、専門家の指導により、製造部品表構成やプロセス計画などにプラットフォームのDELMIA機能をフルに活用しています。
「KEONYSの信頼できるサポートにより、プラットフォームを展開して建設業界の特殊性に適応させています。」(Tonino氏)
Unbrickのチームは、
クラウド版3DEXPERIENCEプラットフォームを採用して、効果的な連携を促進し、ビジネスの成長に合わせて拡張できる統合型のデータ主導型環境を構築しています。Unbrick社は、初期の着想から建物完成に至るまで、プロセス全体のエンドツーエンドのデジタル化を実現しています。
「当社はスタートアップ企業であり、データ移行の必要がないため、非常に円滑に導入することができました。また、より安全なクラウドのため、データの損失や欠落のリスクは非常に限られています。重要なのは、どこからでもデータにアクセスできることです。」(Tonino氏)
一元型のモデリングとシミュレーション(MODSIM)を単一のプラットフォームで活用して、設計および解析エンジニアが製品のインサイトを強化しながら、連携してクリエイティブな設計を行えるメリットがもたらされています。また、このアプローチにより、持続可能なイノベーションを加速させながら、リスクを最小限に抑え、性能を最大限に高めています。
Unbrick社が3DEXPERIENCEプラットフォームの設計機能を使用した最初のプロジェクトは一連の高級別荘の設計でした。
「従来のシステムとワークフローは、かなりプリミティブなものでした。メールでファイルを共有したり印刷図面を郵送することも珍しことではなく、関係者が最新の設計ファイルを使用しているかどうか把握することが困難でした。3DEXPERIENCEプラットフォームでCATIAを使用することで、驚くほど詳細な住宅のバーチャル・ツインを作成できます。このバーチャル・ツインから高解像度の図面を作成して、外部の関係者と容易に共有できます。ライブ・データを表示して、完全な部品表を取得できるので、プロセスに疑問の余地がなくなり、ミスの可能性が減っています。私たちのビジネスでは、ミスが生じると非常に高額なコストが生じるため、当社にとって大きなセールス・ポイントです。」(Tonino氏)
FSC認証木材のサプライヤーを含む、外部の関係者が、プラットフォームを通じて、プレハブ部品に必要な設計に直接アクセスできます。木材の切断にはCNCマシンが使用され、詳細な図面に従って切断を最適化してロール・ストックの無駄を最小限に抑えています。床、壁、天井など、住宅のさまざまなプレカット・コンポーネントは、組み立てられる状態でUnbrick社の工場に搬入されます。
「DELMIAを使用して作成した段階的な作業指示書に従って、当社のエンジニアは、LEGO®のブロックのように住宅を組み立てています。」(Tonino氏)
「ネジのネジ山も確認することもできます。これにより、アセンブリー・チームが、必要なネジの深さを適切に判断できます。勘に頼る作業は一切ありません。また、非常に詳細な分かりやすい図面により、製造担当者の割り当てやトレーニングも容易に行うことができます。」(Smits氏)
この世にベストというものは存在しない
Unbrick社は、単一の拠点ですべてを行うことで作業方法を合理化しています。シェル・モジュールを単一の製造エリアで開発しています。モジュールを完成後に別の製造エリアに移動して、部屋(キッチン、バスルーム、リビングルーム、ベッドルームなど)を完成させています。
「2~3日で1つの住宅を完成させて、すぐに次に移ることができます。これにより、はるかに効率的に作業できるだけでなく、問題点を容易に発見できます。」(Tonino氏)
完成済みのモジュールを現場に搬入して、わずか5時間で組み立てています。
「効率を最適化して環境への影響を軽減するために、現場へのモジュールの運搬方法に至るまで慎重に検討しています。以前は工場から建設現場までの移動に4台のトラックが必要でしたが、3DEXPERIENCEプラットフォームにより、さまざまな積載をシミュレーションして3台に減らすことができました」(Smits氏)
Unbrick社のチームは、すでに効率的な作業を行っていますが、さらにその先を目指しています。同社は「この世にベストというものは存在しない」という言葉をモットーにしています。
「つまり、常に革新的な方法を模索しています。効率、持続可能性、生産技術の向上を常に追求して、日々より良い住まいづくりを目指しています。このために、3DEXPERIENCEのソリューションは不可欠です。新たなアイデアを迅速かつ容易に検証して、必要に応じて調整することができます。つまり、継続的な改善が可能です。」(Smits氏)
エンジニアリング・チームは、3DEXPERIENCEプラットフォームでSIMULIAのパラメトリック設計機能を使用しています。これにより、多数の設計案をシームレスに評価して、機能、持続可能性、コスト、労力などの属性で要件を最適に満たす設計を選択できます。
「ほぼすべての決定に影響が及んだとしても、その反面、必要なだけ何度でも反復作業する自由度が与えられます。試行錯誤して、うまくいかなければ、また繰り返すことができます。初回の住宅からその後5軒目までは、わずかな変更があります。6軒目になると、ほとんどの問題点やミスが排除されます。反復設計機能により、同じミスを繰り返し続けることがなくなります。」(Smits氏)
規模の拡張による成功
Unbrick社は、最初のホリデー・パークを大成功させて、新たに2つのパークの開発に着手しています。
「当社は、建設業界の刷新を目指しています。「そのために、別荘以外にも事業を拡大する必要があります。近い将来、さまざまな製品を提供する工場をさらに展開したいと考えています。これが当社にとって非常に重要なステップになるはずです。」(Smits氏)
Smits氏は、3DEXPERIENCEプラットフォームにより、Unbrick社の将来のビジョンをサポートできると確信しています。
「既に大きなことを達成しています。建築業界において、当社のような会社を立ち上げるには、従来の方法では5~8年かかります。私たちは、3DEXPERIENCEプラットフォームと革新的なアプローチを組み合わせて、2年以内でこれを達成しました。」(Smits氏)
同社は3DEXPERIENCEプラットフォームの利用を拡張して、さらなる効率化を目指しています。
「Plant Layout Designer機能の採用に特に興味があります。これにより、施設の間取り図を正確にデジタル表示して生産ライン全体をシミュレーションして、工場リソースをさらに最適化できます。またENOVIAのプロジェクト管理機能を採用して、プロセスのあらゆる側面で可視化を向上させたいと考えています。」(Tonino氏)
ビジネスの成長に合わせて、プラットフォームも拡張されていきます。Unbrick社の従業員数はすでに10名から80名に増えています。
「ダッソー・システムズの先進的な考え方は、当社と通じるものがあります。このプラットフォームが日々進化していることを実感しています ‐ 新機能が常に導入されています。最終的には、すべてのデータを一元化することで、さらに大きな価値がもたらされます。つまり、各自が関連する方法でデータを表示できます。これにより、プロセスのステップを減らし、時間を短縮して、無駄も減らせます。これは、持続可能なビジネスを進めていくために不可欠な3つの要素です。」(Tonino氏)
Unbrick社について
オランダを拠点とするUnbrick社は、建設会社がこれまで採用してきた従来の資材、プロセス、企業文化を見直すことで、オランダの住宅建設市場を刷新しています。同社は、モジュール方式を採用して、高度なサステナブル住宅のさまざまな建築資材を自社の生産施設においてわずか3日で製造しています。当社のモジュールは、現場に搬入後、わずか5時間で組み立てることができます。
KEONYS NL BVについて
パリ本社を拠点として、オランダを含む複数の現地オフィスを構えているKEONYS社は、3DEXPERIENCEプラットフォームのCATIA、DELMIA、ENOVIA、SIMULIA、3DVIAを含む、ダッソー・システムズ・ソリューションに付加価値を追加して販売するパートナーです。顧客ニーズに合わせた最適なソリューションの導入をサポートすると同時に、包括的なコンサルティング・サービスを提供して、あらゆるトレーニング要件にも対応しています。