画期的な成功
竹内製作所を語るときには、「業界初・世界初」の言葉が欠かせ ません。道路や公園など都市型の工事に適したミニショベル(1971) や、不整地作業に適したクローラーローダー(1986)を世界で初 めて開発したのは、竹内製作所です。同社は 50 年以上にわたって 独創的な技術で建機業界を強力に牽引し、堅牢かつ高品質な製品を 展開しています。今日、同社は世界各国の工事現場でもっとも知ら れているブランドの一つとなっています。販売先の 9 割以上が欧 州や北米、アジアを中心とした海外であり、「1989 年、ベルリンの 壁崩壊の際にも『TAKEUCHI』ブランドのミニショベルが使われま した」と、同社の開発部は語っています。
世界のインフラ整備の需要予測は、2015 年から 2020 年にかけ ての複合年間成長率(CAGR)が 6.8% と、建設重機の業界にとっ て追い風となっています。なかでも土木機械は世界で最も急速な成 長を見せているセグメントです。1 「顧客の多様なニーズに対応す るべく、短期間で様々な製品を開発していくことが企業として求め られていたのです。これまで以上に小型かつ頑丈な、高性能な建設 機械を素早く市場に投入できる環境作りが求められていました。ま た、世界的にみても建設機械に対する排ガス規制は、かつてなく厳 しくなってきていました。こうした中、業務プロセスとそれを支え る情報システムの高度化が必要でした。それまでは互換性のないさ まざまなソリューションを組み合わせて使っていたことで、スピー ドが損なわれていたのです」(同社開発部、以下同じ)
お客様の声はさまざま、対応も千差万別
現在、同社はミニショベルで「標準機」「後方小旋回機」「超小旋 回機」の 3 シリーズを展開しており、オプションを含めたバリエー ションを含めると数百もの機種を取り扱っている状況です。部品点 数は現在展開しているシリーズだけでも 1 万点を超え、顧客ニー ズへの対応によって以前の 4 倍にまでその仕様が膨らんでいたの です。
一方、これまで同社が行ってきた製品設計の中心は 2D CAD を用 いたもので、BOM(部品表)は別のシステムにて構築されていた ため、次第に既存環境の限界が意識されてきました。「設計データ と BOM のデータ共有が行われていなかったことで、仕様管理が複 雑にならざるを得ず、結果として市場の変化に合わせた短期間での 製品投入が難しい面もあったのです」
また、短期間での市場投入に向けて、ミニショベルでは複数の設 計者が情報を共有しながら設計する協調設計が行われてきました。 「ショベルの下部体と上部体、そしてアタッチメントというブロッ クに分けて設計を行いますが、特に上部体にはエンジンや油圧器具、 操縦装置などが配置されており、各種電気系統の配線も必要です。 コンパクトなミニショベルではスペース設計が難しく、情報共有を 緊密に行う必要があります」
しかし、2D CAD では全体像が把握しにくく、部品や稼働部が干渉 してしまうことも。「何か問題が発生すれば、当然設計段階での出 し戻しが何度も発生することに。全員が共通かつ唯一の 3D モデル 上で業務をすすめれば、干渉や間違いがシステム上ですぐに見つけ られるので、こうしたトライアンドエラーを避けることができます。 さらに 3D を使うことで、デジタルモックアップを使った事前確認 ができるようになり、試作品の制作プロセスを簡素化できます」
実は同社では、10 年ほど前にいったん別の 3D CAD を導入した こともありましたが、その際は不十分だったと開発部では振り返り ます。「当時導入した 3D CAD ソフトウェアでは、製品全体を把握 するような数千点規模の大規模アセンブリでのパフォーマンス不足 が顕著でした」
これらの課題を解決する、一元化された堅牢なソリューションと して同社が選択したのが、ダッソー・システムズの CATIA,ENOVIA, SIMULIA からなる設計・管理ソリューションでした。なおこれらは 後にダッソー・システムズの産業機械向けインダストリー・ソリュー ション・エクスペリエンス(シンプル・ソリューション・セレクショ ン)となります。「産業機械向けに特化されたダッソー・システム ズの製品群によるモジュラー・アプローチで、より多くの製品ラインナップを、より厳選されたパーツ数で作り上げることができるよ うになりました。パーツ群の利用率を上げることで、新製品を市場 に投入するまでのリードタイムが削減されました」
「産業機械向けに特化されたダッソー・シス テムズの製品群によるモジュラー・アプロー チで、より多くの製品ラインナップをより厳 選されたパーツ数で作り上げることができる ようになりました」
リアルタイムで検討できるので、共同作業がサクサク 進む
ダッソー・システムズ・プラットフォームでは、構成力に富むモ ジュラー・アーキテクチャーを採用しています。ここには大規模ア センブリにも対応する CATIA や、設計者やプロジェクトのコアメ ンバーが同じ 3D モデルをリアルタイムで参照するための ENOVIA といったアプリケーションが含まれています。「誰かが変更をかけ ても、別のメンバーがすぐに確認してフィードバックできるのです。 ENOVIA のおかげで、エンジニアリング上の変更点の有無を安全な 環境下で確認できます。コラボレーションが改善されることで、ど れだけの時間短縮やエラー削減につながるか、それ以前とは比べ物 になりません」
ダッソー・システムズのプラットフォーム採用により、竹内製作 所には、製品関連の諸活動を遂行できる一貫性のある環境が導入さ れました。「このプラットフォームのおかげで、機能によって異な るベンダの製品を使うような、パッチワーク的な仕組みが避けられ ました。そのような仕組みでは、管理が極めて大変なものになって しまいます。現在、設計や生産の情報は BOM 上に整理されており、 シームレスな受け渡しが可能となっています。設計データから自動 的に BOM を生成するため、ヒューマンエラーというリスクが大幅 に減り、製品開発プロセスが最適化されています」
設計時のデータについては、開発部で CATIA の 3D 設計を行う時 のみならず、生産管理部門や生産技術部門など他部署からもアクセ スする必要がありました。「これらの部署でもすぐに製品情報にア クセスできるようになっています。実際、 このプラットフォームを 利用するユーザー数も、開発部が中心だった導入当時から比べて、 今では 2 倍以上に広がっており、当社の製品設計に欠かせない重 要なソリューションとなっています」
ワークフローがよりスムーズに
3D のデジタルモックアップを扱うことで、解析や検証のプロセ スも円滑に進むようになりました。「SIMULIA アプリケーションを 導入し、生産工程に進む前に設計のテストや修正が可能になりまし た。以前は、2D 図面をおこした上で 3D モデルを作成し、そこか ら解析に移る流れでしたが、今は 3D で設計を行った後すぐに解析 にデータを送り、解析・検証済みの 3D モデルから 2D 図面を自動 的に作成できるようなフローに大きく変わりました。この仕事の進 め方のほうが短期間で済み、効率的です」
熱流体解析、ドキュメンテーション、生産工程のシミュ レーションも視野に
今後竹内製作所では、ダッソー・システムズのプラットフォーム やアプリケーションを使い、熱に関する流体解析にも取り組んでい ければと考えています。特にコンパクトな設計が求められるミニ ショベルでは、熱が重要な課題となります。「熱がたまると機器の 回路部分に影響が出てしまうので、排気は極めて重要な設計要件で す。設計の早い段階で熱を検討材料にいれることで、製品の競争力 を高め、かつ設計の効率化にもつながります」
同社開発部はまた、設計を中心とした上流工程だけでなく、ドキュ メンテーションなどの下流工程にも 3D データを活用していきたい と語っています。「CATIA Composer で最新の設計情報にアクセス し、パーツマニュアルの作成、製造工程における各現場での情報活 用、現場向けのパーツリストの生成といった業務も可能となります。 3D は言語を超えて情報を伝えられるという普遍性を備えているた め、さまざまな言語で業務指示書を作成する必要がなくなります。 3D モデルをガイダンスに使うと、組立ての指示も、視覚に訴える 効果的なものになります。生産効率の向上に向けては、生産工程の シミュレーションや製造現場のレイアウトを検討できる DELMIA の 導入も考えていきたいと思います。さらに、3D のバーチャルモデ ルは営業が潜在顧客に製品をお見せしたり、コンフィグレーション 案を提示したり、といった用途にも使えるものと考えています」
竹内製作所による 3D エクスペリエンスの活用と今後の計画は、 同社の製品開発の効率化にさらに寄与するものになるでしょう。 「『建設機械のベンツ』ともいわれる当社の製品を今後も生み出し続 ける力となります」と、竹内製作所開発部は締めくくりました。
株式会社 竹内製作所
【事業内容】:各種建設機械[標準型ミニショベル(クロ ーラー式、ホイール式、電気式)、超小旋回型ミニショ ベル、クローラーローダー、クローラーキャリア]及び 工業用撹拌機の設計開発から販売までの完成品メーカー
【従業員数】:678 名
【売上】:69,893 百万円(27 年度)
【本社】:長野県
【ウェブサイト】: www.takeuchi-mfg.co.jp
株式会社 豊通シスコム
豊通シスコムは、トヨタグループ、豊田通商グループの 一員として、情報・通信の分野において、「人・社会・ 地球との共存共栄を図り、ICT 事業活動を通じて人・社 会に貢献する」という企業理念のもと、お客様が求めて いるサービスやソリューションを提供し、お客様のビジ ネスに貢献します。