環境に貢献する日本特殊陶業の製品
日本特殊陶業株式会社は、時代のニーズに応え、セラミックスの様々な可能性を引き出し、様々な分野で皆様に満足 いただける製品を開発しています。特に、自動車には、優 れた安全性や走ることの楽しさを実現する快適性や利便性の実現とともに、高い環境性能が求められています。当社はスパークプラグをはじめ、酸素センサーやノックセンサーなど走行性能を高めながら環境効率にも優れた自動車部品を開発しています。スパークプラグは現在では国内外のほとんどの自動車メーカーに採用され、排気ガス浄化システム用酸素センサーと共に、世界トップクラスのシェアを誇っています。
同社センサー事業部では、排気ガス浄化や省資源、温暖化対策など、自然の豊かさを守るために必要不可欠な自動車用センサーを開発しています。なかでも酸素センサーは、当初ガソリンエンジン車用の排ガス浄化用に開発されましたが、現在ではその開発で培ったノウハウを活かし、ディーゼルエンジン車や二輪車にも展開され、世界中の環境良化に貢献しています。
グローバル化の進展に伴う課題
自動車用各種センサーの生産を支えるために、1990 年代に IT ネットワークを利用した図面管理システムを導入しました。その後販売管理・生産管理システムも導入されてきましたが、早くに図面管理システムを構築したために、設計情報の基幹である図面情報と各システムとの連携が上手くいかず、グローバルでのビジネス展開に支障を生じるようになりました。
加えて、自動車販売数の増大、アプリケーションの拡大に伴う新規品番の増大、また、生産工場が拡大し、新規製品を海外展開するために生産地別に図面発行をタイムリーに発行する必要性がでてきました。さらに、ある基幹部品の変更に伴い、それを使用している品番が多数ある場合、大量に図面を変更する必要がありますが、それを迅速に図面発行するシステムがありませんでした。また、一方で、1 つのセンサー製品に対して必要な図面が多数ありながら、図面と部品表 (BOM) の一元管理ができておらず、その管理が煩雑となっています。次いで、3D CAD の活用は行なっていたものの作図履歴の活用が進んでいなかったため、作業時間が掛かっていたと共に設計管理系が旧システムで新設された生産システムと連携が取れていなかったため、図面の BOM(Bills of Materials:部品表)情報が生産現場での生産 BOM に落とし込めなかったなど、さまざまな問題点が存在していました。
「製品の多品種化が進む自動車エンジン向けセンサー業界において、セキュアな環境でスピーディーな設計情報の伝達をグローバルに展開できる次世代技術管理システム (EDS) の構築が急務でした。これをダッソー・システムズ社の 3D エクスペリエンス (ENOVIA/CATIA)を用いて開発し、生産増大、拠点拡大に貢献するシステムとして活用していきます。」
3D エクスペリエンス・プラットフォームで将来を見越した設計の基礎づくり
これらの課題を解決する手段として同社が選択したのが、現在同社の基幹 CAD として採用されているダッソー・システムズの CATIA と親和性の高い 3D エクスペリエンス・プラットフォーム上で提供される ENOVIA V6 を導入し、設計情報の一元管理を可能とする次世代技術管理システム(EDS: Engineering Data System) の構築でした。さらに将来を見越した取り組みとして、同じく 3D エクスペリエンス・プラットフォーム上で提供される CATIA V6 の導入も開始し、モジュール設計の基礎づくりを始めるという設計の効率化の取り組みも並行して行っています。
スピーディーなグローバルビジネスを 強力にサポート
同社が構築に取り組む EDS は、顧客要求と顧客満足とを繋ぐサプライチェーン全体で、生産情報を与える技術開発プロセスをサポートするシステムになります。自動車関連事業本部センサー事業部技術部副主管の安藤雅史氏は、「EDS により、生産管理システムとの連携を強化し、セキュアな環境でスピーディーな設計情報の伝達をグローバルで実現することを目指しました。このシステムにより、生産数の拡大や生産拠点の拡大への対応がより迅速に行えるのではないかと考えています。」と述べています。「EDS での中核的な要件となったのは、設計図面に付随する各種の関連情報を的確に紐付け、迅速に抽出し、配信できることです。また、設変を容易にし、設計の効率化も必要です。このために、一貫した設計情報を実現できるダッソー・システムズの 3D エクスペリエンス・プラットフォームを採用しました。」とも語っています。
設計図面や CAD データ、さらにさまざまなファイル形式 で 記 録 さ れ た 設 計 情 報 や BOM 情 報 な ど、1 つ の セ ンサー製品を製造するために必要な情報を ENOVIA に集約し、ENOVIA 上で重要情報を一元管理することにより、製造部門や国内関係部署との情報共有、さらには海外拠点への図面閲覧や配信が容易となりました。
EDS では、製品の品番に対してドキュメント情報と図面の紐付けが行なわれているため、一体で検索/閲覧が可能で生産性が向上しました。また、工程タイプや包装情報といった情報との紐付けも行なわれており、関連する全ての情報が包括的に入手できるように工夫されています。
同時に同社では、2D メインの設計から 3D 設計への移行やモジュール化の実現に向けた取り組みにも着手しています。まずは CATIA V6 の一部導入もはじめました。センサーの設計では、基本的なセンサーの性能仕様に加え、取り付け部分の形状に応じたサイズや接続のためのコネクタの種類など、様々な仕様の組み合わせが行なわれます。こうした仕様のバリエーションを標準 / モジュール化することで、顧客の要求に合わせて適切なモジュールを選択し、必要な部分だけを新規に設計を留める事により要する時間を大幅
に短縮することも可能となります。こうした新たなイノベーションに関しても、ENOVIA V6/CATIA V6 による情報共有プラットフォームが大いに役立つのではないかと期待しています。
日本特殊陶業株式会社の取り組みは、多数の海外拠点を運営する日本の製造業が普遍的に直面するであろう分散した情報の効率的な管理という課題を 3D エクスペリエンス・プラットフォームを導入して解決を図ろうとするものです。長い歴史を持つが故に古い設計のシステムを使い続けている例も珍しくない製造業において、最新世代の IT 活用を積極的に進める進歩的な事例としてその成果が注目されます。
日本特殊陶業株式会社
【資本金】 47,869 百万円
【本社】 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町 14-18
【従業員数】 単独:5,809 名(2014 年 3 月)連結:12,760 名(2014 年 3 月)
【ホームページ】 www.ngkntk.co.jp
【主な事業内容】 (1) スパークプラグおよび内燃機関用関連品の製造、販売