Paper dreams
フィンランドの板紙メーカーであるMetsä Board社は、過去数十年の間に大きな成長を遂げ、上質紙メーカーからヨーロッパをリードする大手板紙企業として発展し続けています。同社の板紙により、毎日何百万ものパッケージが製造されて世界中で消費されています。
同社は、事業への投資の結果、パルプの自給率が高い持続可能性の先駆者として高く評価されています。同社が使用するウッド・ファイバーはすべて、持続可能な方法で管理、認証、管理されたヨーロッパ北部の森林から供給されており、トレーサビリティが100%確保されています。
同社は最近、主に2014年から2019年の間に温室効果ガス排出量を40%以上削減したことにより、Financial Times Europeの「Climate Leaders 2021」リストにも選出されました。
Metsä Board社の研究・製品開発担当副社長、Markku Leskelä氏は次のように述べています。「サステナビリティは、私たちのビジネスのDNAの一部です。私たちは、すべての仕事を効率的に行い、環境への影響を最小限に抑える必要があります。気候変動の緩和は、当社の持続可能性への取り組みの中核です:2030年までに非化石燃料/二酸化炭素排出ゼロの工場を目指しています。この目標を達成することで、地球温暖化を1.5℃に抑えるパリ協定の最も厳しい要件を満たすことができます。当社が使用する原材料はすべて、持続可能な方法で管理された森林から供給されており、トレーサビリティが100%確保されています。また、すべての工場が環境マネジメントシステム(ISO 14001)と品質マネジメントシステム(ISO 9001)、さらにPEFCとFSCのChain of Custody認証を取得しています。」
さらに、新しい持続可能なパッケージング・ソリューションの開発への最大限の集中的な取り組み、ならびに消費財および製薬業界の両方での顧客からの迅速なフルフィルメントへの飽くなき要求は、Metsä Board社の新しい革新的な業務方法につながりました。
「競争に勝ち残るにはイノベーションのスピードを加速させる必要があることは明らかでした。従来の方法では、パッケージング材料やデザイン・ソリューションの最適化に時間がかかりすぎていました。また物理的なプロトタイプを制作し、それを輸送してテストする必要があり、テスト結果に基づき板紙を提案して、必要に応じてデザインを調整するという同じプロセスが繰り返されていました。」(Markku Leskelä氏)
社内のコラボレーションも改善する必要がありましたが、最新のデザインをリアルタイムで把握することで、優れた顧客体験を提供できるようになっています。「顧客の期待を上回るための改善方法が分かりました」とMarkku Leskelä氏は述べています。
「実際のプロトタイプと比較して、最適な板紙を提案するまでの時間を85%短縮しています。」
成功への足がかり
Markku Leskelä氏は、モデリングとシミュレーションの技術がチームに新しい働き方をもたらすことを認識していましたが、相応しい解決策を見つけるまでには時間がかかりました。「必要な機能が見当たらず、技術の進歩がまだ不十分と考えていましたが、最終的にダッソー・システムズの3DEXPERIENCE®プラットフォームにたどり着きました。3DEXPERIENCEプラットフォームは、まさに私たちが求めていたものでした。」(Markku Leskelä氏)
3DEXPERIENCEプラットフォームは、Metsä Board社に革新的な3Dシミュレーション機能を提供するものでした。高度なパッケージング・デザインを容易にシミュレーションして、ボタンをクリックするだけで検証できます。デザインをクラウド上で安全に共有して、どのデバイスからでもアクセスできるため、地理的に分散しているチームが目的に応じて連携することができます。単一のプラットフォームが提供する同時並行エンジニアリングにより、同社は意思決定にかかる時間を短縮して、顧客への提案とソリューション提供をより迅速に行っています。
Markku Leskelä氏は、長年にわたる従来の業務方法を変革するには、段階的で着実なアプローチが必要であることを認識していました。「一歩ずつ前進することを望んでいました。習得期間を予想して、適切なトレーニングを受けることが重要なポイントになると考えていました。」(Markku Leskelä氏)
Markku Leskelä氏のこの慎重なアプローチは功を奏しました。「ダッソー・システムズの専門的なトレーニングとサポート後、比較的短期間で3DEXPERIENCEプラットフォームを導入して、予想よりも早く成果をもたらすことができました。」(Markku Leskelä氏)
3DEXPERIENCE プラットフォームにより、Markku Leskelä氏とチームは顧客にまったく新しいサービスを提供することができました。3Dシミュレーションは現在、Metsä Board 360 Servicesと呼ばれる同社のサービスの重要な一部となっています。
「Metsä Board 360 Servicesは、当社顧客がそれぞれのニーズに最適なソリューションを構築できるように考案されています。3DEXPERIENCE プラットフォームを通じて提供される高度なシミュレーション技術を使用することで、顧客の既存のパッケージング・ソリューションのバーチャルツインを作成し、さまざまなシミュレーション環境において新しいソリューションがどのように機能するのか検証することができます。」(Markku Leskelä氏)
Metsä Board社は、このサービスを顧客のパッケージングが環境に及ぼす影響を低減するための大きな一歩と捉えています。「当社の高度なテスト機能により、二酸化炭素排出量の少ない、より軽量な板紙グレードを推奨できます。パッケージング・サンプルの特性を分析することで、カーボン・フットプリントとコストの両面を最小限に抑えながら、同等の性能を実現する軽量化を提案できます。また、機能性、リサイクル性、ブランド・インパクトを向上させて、パッケージングの性能を最大限に引き出すことができます。」(Markku Leskelä氏)
さらに、最も注目すべきは、そのスピードです。「実際のプロトタイプ使用時と比較して、データに基づいた新しいパッケージを提案するまでの時間を85%短縮できます。さらに迅速かつ容易なソリューションによるメリットを当社顧客にもたらしています。」(Markku Leskelä氏)
複雑なパッケージング要件への対応
Metsä Board社の消費財顧客は、特にオンライン販売に特化したニーズに対応しているため、市場投入までの時間短縮には特に大きなメリットがあります。
「コロナ禍がEコマースの普及を後押しして、新しい革新的なパッケージング・ソリューションへの需要が大幅に増えています。Eコマース市場と実店舗のニーズはまったく異なります。Eコマースでは商品が注文先に届くまでの積み下ろしの頻度が実店舗に比べてはるかに多くなります。つまり、軽量でカーボンフット・プリントをできる限り抑えたパッケージを保証しながら、このような取り扱いに耐えるデザインが必要です。」(Markku Leskelä氏)
Metsä Board社は現在、3DEXPERIENCEプラットフォームでAbaqusによる有限要素(FEM)シミュレーションによるメリットを活用しています。このシミュレーション機能により、同社では3D設計図面や既存のパッケージサンプルの寸法を測定し、その構造データと板紙の強度データを使うことでパッケージ設計の強度を計算することが可能です。
同社は自社製品のほぼ無限の用途を非常に迅速にテストすることができています。さらに、圧縮荷重下での動き、輸送振動、落下テストのシミュレーション、一次包装のコンテキストでの二次包装など、より複雑な使用ケースや状況をシミュレーションすることもできます。「シミュレーション中にパッケージング内部の挙動も確認できます。 これは、これまで達成できていなかったことです」とPekka Suokas氏(R&Dマネージャ、Metsä Board社)は述べています。
「物理的なプロトタイプやテストでは数週間かかっていたことを、さまざまな使用ケースや条件のシミュレーションにより、わずか1日で行えるようになりました。」
製薬会社へのメリット
Metsä Board社の新しいシミュレーション機能は、製薬業界の顧客にもメリットをもたらしています。「製薬業界ではさまざまな要件があります。厳しい規制に準拠するだけでなく、極端な温度にも耐えられるパッケージングが必要です。」(Markku Leskelä氏)
その一例が、COVID-19ワクチンなどを投与する薬剤バイアルのパッケージングです。ワクチンは世界中に配送されるため、製造施設から投与される場所までのルートが複雑であり、各段階で慎重な管理が必要です。医薬品の安全性と無菌性を維持しながらサプライチェーン全体を通じて完全に追跡可能であることを保証する、高品質で目的にかなったパッケージングが不可欠でした。
「当社は製薬メーカーが投与ワクチンを保護するパッケージングに使用する板紙を最前線でテストしました。摂氏‐70℃の低温下で規定の厚み、機械的強度、吸水性を維持する必要がありました。寸法に変化が生じると、曲がったり膨らみが生じて、パッケージングの完全性のみならず内容物の安全性にリスクが生じる可能性がありました。」(Markku Leskelä氏)
Metsä Board社は、3DEXPERIENCE プラットフォームにより、極度な低温や湿度に至るまで、さまざまな条件下での板紙の機能をバーチャル・シミュレーションで実行し、輸送や板紙コンディショニング・テストなどの強度シミュレーションを開発することで、実環境におけるパッケージ機能を実証しています。「物理的なプロトタイプやテストでは数週間かかっていたことを、さまざまな使用ケースや条件のシミュレーションにより、わずか1日で行えるようになりました」とPekka Suokas氏は述べています。
Metsä Board社は製薬会社の顧客に対して、強度、サイズ、性能の最適なバランスを実現しています。また、デザインの早期段階でモデリングとシミュレーションを行い、パッケージの重量を最小限に抑えることで、材料とコストの両面を節約しています。「医薬品のパッケージング・サンプルの特性を分析することで、パッケージングに伴う二酸化炭素排出量を削減しながら同等の性能を実現する、より軽量な板紙を推奨することができます。当社は年間130万トンの板紙を生産していますが、そのすべてを1個7グラムの医薬品パッケージに使用すると、1日に4億3,000万個の生産に匹敵します。板紙の重量を1%減らすだけで、430万個のパッケージを製造するために必要な天然資源を毎日節約できます。」(Markku Leskelä氏)
社内関係者との連携
Metsä Board社の従業員も連携による大きなメリットを実感しています。同社のチームは、3DEXPERIENCEプラットフォームのENOVIAにより、すべての主要な関係者が最新のデザインと重要なデータの単一のビューにアクセスできるため、より信頼性の高いイノベーションに取り組んでいます。
さらに、変更や調整をオブジェクト・レベルで共有できるため、チームが同じ製品に対して同時並行して作業を進めることができます。「はるかに効率的に問題を解決することができています。意思決定をより迅速に行い、効率と生産性を向上させて、デザイン/製造ミスの可能性を減らしています。」(Pekka Suokas氏)
より環境に配慮したより明るい未来への扉を開く
Metsä Board社の経営陣は、3DEXPERIENCEプラットフォームにより、将来に向けた万全な準備ができていると考えています。
「将来的に、このソリューションの利用を拡大して、さらに多くのメリットを実現したいと考えています。私たちの業界はかなり保守的なので、このタイプのソリューションをいち早く採用できて幸いでした。サービス・プロセスだけでなく、バリュー・チェーン全般を改革する大きな可能性があると信じています。」( Pekka Suokas氏)
「最終的に、私たちが成功するか否かは、新しいソリューションを開発して顧客に提供するスピードによって決まります。「そのためにシミュレーションが役立つことは間違いありません。先端技術により、従来のサプライヤーよりも多くのことをより早く達成することができます。シミュレーションが将来を切り拓き、新たな可能性と注目すべき用途を促進することを大いに期待しています。」(Markku Leskelä氏)
Metsä Board社について
Metsä Board社は、ヨーロッパを代表する高級フレッシュファイバー板紙メーカーです。同社は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの顧客に軽量で高品質な折りたたみ板紙、外食用板紙、ホワイト・クラフトライナーを提供しています。同社製品に使用されている純粋なフレッシュファイバーは、再生可能な資源であり、持続可能な方法で管理されたヨーロッパ北部の森林で生産さています。サステナビリティの先駆者として、同社は2030年までに完全な脱化石燃料工場/原材料を目指しています。
詳細情報:www.metsaboard.com