ファサードを裏で支える専門家たち
KG Constructions は、北ヨーロッパ最大手のファサード専門工事会社の 1 社として、その地域に拠点を持つゼネコン、投資家、開発者にサービスを提供しています。しかし、それだけで満足しているわけではありません。
同社の設計主任、Andrius Nikolajevas 氏は次のように述べています。「現在、英国とスイスに進出しています。ユニット式のカーテン・ウォールが当社の主力製品です。こうした大型ユニットは当社の工場で製造・組み立てられた後、現場に運ばれてから建物に設置されます。当社は、お客様のアイデアがどんなに複雑でも、それを現実の形にし、どのプロジェクトでも美観、コスト、効果の最適なバランスを見つけることができます」
今のところ、グループ全体の従業員数は 400 人程度ですが、将来に向けて明るい展望を持っています。「短期的には、従業員数の増員が 100 人以上になると見込んでいます」と Nikolajevas 氏は語ります。
しかし、建設業のような競争の激しい業界で成長を達成することは容易ではありません。「目標を達成し、同業他社の一歩先をいくには、常にアンテナを張っている必要があります」と Nikolajevas 氏は語ります。「私たちはお客様の声に耳を傾け、市場の変化に細心の注意を払う必要があります」
これは、持続可能性などの火急の問題に正面から取り組むということを意味します。Nikolajevas 氏は次のように話します。「数年前までは、持続可能性に関心を抱く業者はごく一握りでしたが、今では完全にその流れに乗らなければならないのです。具体的な計画を立て、外向けにアピールする戦略を実践し、CO2 排出量や廃棄物の削減などに関する規制要件の強化に対応できるようにする必要があります」
持続可能な成功を生み出す
その結果、KG Constructions は、持続可能性に対する 5 ヵ年計画を打ち出し、2025 年までに CO2 排出量をゼロにするという目標を自らに課しました。そこで、これからはどのようにして、責任あるサプライ・チェーンを実現し、サイバーセキュリティや従業員の健康と福祉、廃棄物の削減、製品の持続可能性、運用効率に対する取り組みを改善していくのかについて説明します。
「持続可能性は単に環境に優しいだけではないことに気が付きました」と Nikolajevas 氏は語ります。「それは、従業員、コミュニティ、お客様を大事にすることでもあるのです。持続可能性に関する新しい戦略を立てておけば、新しい市場の要件に対応しやすくなり、競争力も維持しやすくなります」
同時に、同社は顧客の高まる需要に応えていかなければなりません。Nikolajevas 氏は次のように話します。「私たちが立ち上げるプロジェクトはどれも、ユニークなものばかりです。建築には、非常に厳しい建設基準を満たすだけでなく、厳しいプロジェクト要件も満たすことが求められます。期待値は次第に高まっていて、お客様は現在、特注の窓枠、専門家に訴求するファサード、複数の外壁によるファサード・システムを求めています」
設計、エンジニアリング、製造の観点からすると、これには相当な困難が伴います。「年を重ねるごとに、要件の複雑さが増していきます」と Nikolajevas 氏は語ります。「現在、私たちが手掛けているほとんどの建物には、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)だけでなく、製造のための詳細な 3D 設計も必要とされます。それがあれば、扱う情報の精度が上がり、生産に取り掛かる時期を早めることもできます。また、すべての関係者が建設前に設計を試し、問題を解決できるようになります」
3DEXPERIENCE プラットフォームを使用することで、従来の方法でかかっていた時間を 30% 短縮できたと推定しています。
効率性の向上を追求する
しかし、KG Constructions の設計チームが試した 3D 設計プログラムでは性能的に限界がありました。KG Constructions の設計チーム・リーダー、Julius Zykus 氏は次のように述べています。「数えきれないほどの 3D モデリング・プラットフォームを試してみましたが、どれも私たちのニーズに満たすだけの柔軟性を備えていませんでした。工業化に耐えられるだけの部品表(BOM)を作成できなかったのです。私たちは、BIM と製品ライフサイクル管理(PLM)の両方を備え、建設プロジェクトのバーチャル・ツインを生み出すことができるソリューションを探していました」
「しかし、どうにも見つからず途方に暮れていました」と Nikolajevas 氏は語ります。「この先、成長できるようにするには、効率性と革新性を高める以外に方法がなかったのです。建設に関するノウハウを活用しやすくする新しいテクノロジー・プラットフォームが必要でした。当社のプロセスの足並みを揃え、設計から製造まで一貫したデータを使用できるようにしたいと考えていました。3D で設計でき、すべてのプロセスがそのメリットを享受できるようにしたかったのです」
探すのを諦めかけていたときに、Nikolajevas 氏と Zykus 氏は 3DEXPERIENCE® プラットフォームの存在を知りました。「ダッソー・システムズの 3DEXPERIENCE プラットフォーム、具体的に言うと CATIA アプリケーションには他とは違う特長がありました」と Nikolajevas 氏は語ります。「私たちが求めていた柔軟性を備えていたのです」
「CATIA の 3D モデリング機能とシミュレーション機能を使用して、当社の各ユーザーや全体に与える効果を最適化することができます」と Zykus 氏は付け加えます。「このソフトウェアでは、どのようなファサードでもモデル化できるだけでなく、現実の環境の中に置いたときの状況を想定しながらモデル化することができます。これでやっと、求めていた結果を得られるソリューションにたどり着いたというわけです」
無限の可能性
同社は効率性を大幅に高めるために、クラウド版のソリューションを導入することを決めました。Zykus 氏は次のように話します。「クラウドは柔軟性が非常に高く、どこからでも接続でき、作業対象は常に最新モデルです。ローカルに設置したサーバーのコストや管理を心配する必要もなく、セキュリティに必要なものも最初からすべて揃っています。必要なのは、良好なインターネット接続だけです。それがあれば外出先で仕事ができます」
しかし、この新しい働き方には課題がいくつかありました。「カルチャー・ショックは相当でした」と Zykus 氏は語ります。「このようなやり方でクラウドを介して作業するようになると、これまでとはまったく違うファイル管理システムが必要になりますが、そのことに対して従業員から反対の声が上がりました」
「プラットフォームでできること、その実際のやり方を正確に理解していましたが、長年続けてきた働き方を変えるのはかなりの難行でした」と Nikolajevas 氏は付け加えます。「しかし、前進あるのみという認識に立っていたので、この変化を受け入れてもらうしかなかったのです」
これは、ダッソー・システムズのパートナーである RAND Finland Oy の協力を得て実現しました。Zykus 氏は次のように話します。「プラットフォームを習得するために、Eduspace でトレーニングを実施しました。ビデオ版のブログやその他のビデオ・レッスンも見ました。RAND Finland Oy の協力でオンラインセミナーを何回か開催し、ダッソー・システムズとの 3 日間コースの学習セッションも実施しました」
しかし、Nikolajevas 氏は、プラットフォームを効果的に学習しようとするなら、「実際に使う」に勝る方法はないことに気づきました。「そこで、最も効果的な方法で変化を推し進めるために、リトアニアのビリニュスにある当社の新工場の設計は、全面的に 3DEXPERIENCE プラットフォームを使って行うことにしました」と同氏は語ります。
CATIA の 3D モデリング機能とシミュレーション機能を使用して、当社の各ユーザーや全体に与える効果を最適化することができます。このソフトウェアでは、どのようなファサードでもモデル化できるだけでなく、現実の環境の中に置いたときの状況を想定しながらモデル化することができます。
建設に関する知識を獲得する
新工場は 6 ヘクタールの敷地に建設され、開発は 2 段階に分けて行われます。Nikolajevas 氏は次のように話します。「第 1 段階では、13,800 平方メートルの工場と管理棟を建設し、そこで KG Constructions のアルミガラス製ファサード製品を製造する予定です。工場内に、6 つのエレメント組立ラインと、窓とドア専用の組立ラインを設置する予定です。これで、生産能力が今の 2 倍になります」
新工場に加えて、総面積 2,620 平方メートルの、モダンで立派な 3 階建てオフィス・ビルも建設する予定です。「建設プロセスはすでに始まっています」と Nikolajevas 氏は説明します。
プロジェクト展開の第 2 段階では、新たに 7,000 平方メートルの生産工場(管理棟付き)を計画しており、グループの子会社である UAB Lignas 社がそこに入る予定です。着工は 2023 年の予定です。
「このプロジェクトで、3DEXPERIENCE プラットフォームの真価が試されました」と Nikolajevas 氏は語ります。
そして、実際にプラットフォームの能力が証明されたのでした。Zykus 氏は次のように話します。「新しい製造工場全体を設計、構築、製造するために、このプラットフォームを使用しました。このプラットフォームの 3D モデリングを使用して BIM を作成し、工場全体を視覚化しながら、すべての主要なプロセスを実施しました。以前は手作業で作成していた部品表(BOM)を、自動的に作成できるようになりました。そのおかげで、ミスがなくなり、作業がスムーズに進行しました」
コラボレーションも大幅に改善されました。「私たちは全員同じ空間で働いています」と Zykus 氏は語ります。「設計のコピーをいくつも作成する必要がなくなったため、常に最新バージョンをベースに作業しています」
チームは、2D 図面も機械的な作業もなしで、設計から製造に作業を進めることができました。「信じられないほど効率的でした」と Nikolajevas 氏は語ります。「3DEXPERIENCE プラットフォームを使用することで、従来の方法でかかっていた時間を 30% 短縮できたと推定しています」
未来を構築する
この成功を受けて Nikolajevas 氏は、KG Constructions の将来に向けて、3DEXPERIENCE プラットフォームが大きな役割を果たすと確信しています。「このソフトウェアとの関係を説明するように求められたとしたら、『付き合い始めたばかり』と答えるでしょう」と同氏は語ります。「しかし、この付き合いは長く続くと思います。特に ENOVIA のおかげで、情報の再利用や、設計の最適化が非常に簡単にできるようになったため、今後のプロジェクトを進めるうえで大いに役立つと思っています。また、より魅力的な方法でアイデアを提示することもできます。すべてが非常に正確になったことで、製品を最初から正しく製造できるようになり、廃棄物も減らすことができます。これらは、当社の持続可能性に関する戦略の支えになるでしょう」
Nikolajevas 氏は、このソフトウェアをさらに活用したいと考えています。「3D 設計のデータを他の部門に引き継げるようにしたいと考えています」と語ります。「プロジェクトをより効率的に処理できるように、DELMIA や ENOVIA などのさまざまなアプリケーションの使用を検討していきたいと考えています。また、このプラットフォームで CO2 を計算できるようにしたいとも考えています。現在、手作業で計算しているため、それが大きな負担となっているからです」
Nikolajevas 氏は、3DEXPERIENCE プラットフォームを活用することで、最終的には他社よりも一歩リードできるようになると確信しています。「私たちは、業界を変革しているネットワークの一端を担っています」と同氏は語ります。「ファサードのエンジニアリング部門は、他の建設分野と比較して、常に数歩先を進んでいます。ダッソー・システムズのテクノロジーを採用したことにより、業界の発展に貢献することができます。私たちは設計の自由度を上げることを追求しています。これは、お客様にとって非常に魅力的なものに映るでしょう」
KG Constructions 社について
KG Constructions は、バルト海沿岸諸国とスカンジナビア諸国において、アルミニウム製およびガラス製のファサード建造物を手掛けている大手メーカーです。重点的に改善を重ねてきたことで、技術的な準備や設計前のテスト、設計、プロジェクト管理、生産、物流、設置、保証の各サービスというように、多岐にわたるサービスで、独自の建築様式を持つ建造物の構想を実現できるようになりました。
詳細については、www.kgcgroup.com を参照してください
RAND Finland Oy 社について
RAND Finland Oy は、製品データ管理、製品ライフサイクル管理(PLM)、CAD/CAM、リアリスティック・シミュレーション(FEA)、販売/製品コンフィギュレーターのイニシアティブを専門としています。RAND Finland Oy は、これらのイニシアティブを対象としたターン・キーのソリューションとサービスを提供しています。経験豊富で熟練した人材がその成功の基盤です。20 年以上にわたり、フィンランド、北欧だけでなく、世界各地の顧客に PLM ソリューションを提供しています。RAND 独自のチームに加えて、そのサービスを補完する専門家の幅広いネットワークも築いています。同社が専門としているダッソー・システムズのソフトウェア・ソリューションは、3DEXPERIENCE、CATIA、SIMULIA、DELMIA、EXALEAD、ENOVIA です。