グリーンで手頃な価格の小型トラックをすべての人に
荷物の運搬やオフロード走行が可能な EVUM Motors社のaCarは、農村部での人々のモビリティ・ニーズに合わせて設計された、新しいタイプのモジュール型電動小型トラックです。乗用車ではなく小型トラックとして発案された、この頑丈で機能的、しかも手頃な価格の環境に配慮した4WD車のアイディアは、ミュンヘン工科大学(TUミュンヘン)で生まれたもので、エンジニア・チームがアフリカ市場向けの電動車プロトタイプの設計に着手しています。同チームの目的は、発展途上国や新興国でも容易に製造および資金調達できる電動車の開発をすることです。このため、シンプルで持続可能な作業車で、顧客の近くで製造でき、メンテナンスが容易で、険しい地形での走行でき、商品や人の輸送から収穫物や農機具の運搬まで、さまざまな要件に対応した開発が必要でした。
その結果、走行距離200キロ、最高時速70キロ、積載量1,000キロの電動四輪駆動車、aCarが創案されました。48Vバッテリーで駆動し、屋根のソーラー・パネルで追加充電できるaCarは、モジュール設計により、職人、ブドウ園作業員、造園業者など、さまざまなユーザーのニーズに合わせて構成を容易に変更できます。
ミュンヘン工科大学でaCarのプロジェクト・マネージャを務め、現在はSascha Koberstaedt氏と共にEVUM Motors社のCEO兼共同創業者、Martin Šoltés氏は、次のように述べています。「当社は、aCarを通じて世界を少しでもより良くするために貢献しています。当社は、ひとつのアイデアに固執することなく、顧客の近くで地元に根ざして、環境に配慮した生産を実現する車両設計を重視しました。これにより、世界の富をより均等に分配して、発展途上国や新興国の人々を経済サイクルに組み込むことに、微力ながら貢献できると考えています。これは当社の非常に重要なミッションであり、単なる発想で終わらせたくありませんでした。」
現在EVUM Motors社は、aCarをコンセプトから製品化の段階まで進めて、ドイツのバイエルバッハにある生産施設において商用規模で生産する準備に取り掛かっています。
EVUM Motors社のCEO兼共同創業者、Sascha Koberstaedt氏は述べています。「aCarは、誰もが利用できる持続可能なモビリティ・ソリューションです。シンプルで経済的な革新的コンセプトであり、輸送分野におけるエレクトロモビリティの未来を示しています。aCarは、「原点回帰」であると同時に「最先端」でもあります。シンプルでありながら最新技術を駆使しており、直感的で目的志向、非常に多目的に利用できます。非常に長持ちする省エネ・バッテリー・ソリューションにより、わずか48Vのバッテリーで実に効率的に走行でき、しかも急勾配の斜面でも登ることができます。aCarは、どんな予算にも合い、環境にも優しい、小さくて軽いマッスルマンなのです。」
電気自動車分野に参入するための期間は限られています。このため、信頼性が高い完全に開発済みの製品を、迅速に市場に投入する必要があります。クラウド版の3DEXPERIENCEにより、開発を加速させています。
aCarの市場への投入
EVUM Motors社にとって、競争の激しいEV業界で地位を確立して、生産規模を拡大することが急務でした。そのため、オペレーションの拡張と市場投入までの期間短縮をサポートする、技術プラットフォームを必要としていました。チーム・メンバーの多くが、ミュンヘン工科大学での初期プロジェクトに関わり、CATIAの設計アプリケーションを使い慣れていたため、クラウド版の3DEXPERIENCE®プラットフォームを採用することは、ごく自然な決定でした。
「CATIAは、最も使いやく効果的な設計ソリューションだと思います。大学で教わった主要なツールのひとつであり、ツールの使い方を知っているという利点もあり、3DEXPERIENCE プラットフォームの機能を拡張したいと考えました」
スタートアップ企業であるEVUM Motors社にとって、エンタープライズ・レベルの技術を利用して迅速な立ち上げに必要な機能を獲得することが非常に重要でした。同社は、クラウドにより、前例のないスピードと規模で車両の設計から生産に進むことができることを認識していました。
「国から大規模かつ強力な資金援助を受けられる、エレクトロモビリティの分野に参入できうる期間は限られています。このため、信頼性が高く完全に開発済みの製品を、いち早く市場に投入する必要があります。クラウド版の3DEXPERIENCE プラットフォームは、開発を加速させるために必要なデータや情報を迅速に交換するのに役立っています」
(Šoltés氏)。
EVUM Motors社は、ダッソー・システムズのビジネス・パートナーであ3DEXPERIENCEの専門家であるCENITと提携してプラットフォームを導入しました。
「ビジネスを立ち上げるにあたり、当社のニーズについてCENITに相談したところ、拡張性のある柔軟なソリューション、3DEXPERIENCE プラットフォームを提案されました。学生向けライセンスからビジネス・ライセンスへのすべてのデータ移行をCENITが全面的にサポートしてくれました。また疑問や問題に対して、速やかに対応してもらえます。導入および稼働まで担当してもうらい、追加のライセンスやトレーニングが必要なときは相談することができます」。
ドイツとガーナでのテストに成功し、2019年のフランクフルトのIAA2019国際モーターショーなど、業界イベントでも好評を博したEVUM Motors社は、まず欧州市場でのaCarの販売を決定しています。ヨーロッパ各地の業者の間で、多目的で手頃な価格のEVに対する需要が高まっていることがその理由です。
「この製品は、シンプルで安価な電気自動車が求められている、ドイツならびにヨーロッパの市場環境に完璧に適合しています。幅広いさまざまな業種において、実際の作業に適した頑丈な車両が必要とされています。持続可能性の側面も重要であり、CO2排出量を削減できる環境に配慮した車両が求められています。また、日常業務の経費節減に役立った上、まだ未知の部分もある新しい技術に対する信頼性の高いサポートの保証も必要です」
クラウドを利用して新たな市場に参入
クラウドの導入は、さまざまな面でEVUM Motors社のビジネス・ニーズを最適に満たしています。クラウド版の3DEXPERIENCEプラットフォームは、ビジネス・ニーズに合わせてコンピューティング・リソースをスケールアップ/ダウンできる俊敏性と柔軟性を提供するだけでなく、新たな市場への参入に合わせて適応および拡張して将来性を確保できるソリューションです。同社の「ドイツ発のエンジニアリングをあらゆる場所で再考案する」という理念を実現します。
「当社はドイツ企業であり、高水準な開発業務を誇っています。一方で、欧州以外の地域では、シンプルなモビリティ・ソリューション企業というイメージにより、認知度を高めたいと考えています。つまり、電動車は高額ではないことを示す必要があります」。
aCarのシンプルかつ信頼性の高い設計は、低予算の投資コストで生産を実現するために重要です。近い将来、EVUM Motors社は、生産施設を発展途上国や新興国で展開して、より強力な地域経済を構築するために、多くの車両部品の現地生産を計画しています。世界各地での新たな生産施設の立ち上げに沿って、同社はクラウド・ベースのプラットフォームをビジネスに合わせて拡張して、あらゆる要素を結び続けることができます。
「クラウド・ベースのシステムはどこでも利用できます。ロケーションベースではないので、別の国に生産拠点を設立しても、所在する国に関係なく、全員が同じプラットフォーム上のどのデバイスからでも仕事ができるということです」。
「スタートアップ企業にとって、迅速かつ効率的に作業を進めることは極めて重要です。」
EBOMとMBOMを単一のプラットフォームに統合
EVUM Motors社は、aCarの板金部品の設計にCATIAを使用して、外部サプライヤーによる部品設計を取り入れて、各モデルを作成しています。クラウドで外部サプライヤーと容易に連携でき、制限のないコンピューティング機能により、包括的な予備調査を実行して、可能な限り最適な設計を特定しています。
EVUM Motors社の機械設計チーム責任者、Florian Liebl氏は次のように述べています。「当社は、板金部品を設計しています。CAITAを使用して、板金部品を設計し、アセンブリー・サプライヤーからのファイルと合わせ込みます。3DEXPERIENCE プラットフォームの優れた点のひとつとして、複数の関係者が同時並行作業により、同じアセンブリー・グループに取り組むことができます。」
また、同社はDELMIAを活用してCATIAのエンジニアリング部品表(EBOM)から直接、製造部品表(MBOM)を定義し、設計データを使用して、下流プロセスに直接引渡しています。これにより、エンジニアが生産の計画と検証を行い、生産能力と品質をリアルタイムで可視化できます。
「CATIAとDELMIAを同時に導入することが重要でした。DELMIAをプロセス計画およびタイム・スケジューリングに使用しており、将来的には作業指示書の作成にも使用する予定です。デジタル連続性は、当社にとって極めて重要です。すべてを単一のプラットフォームで取り扱い、CATIAのEBOMをMBOMに直接移行できることが大きなメリットをもたらしています」
(Liebl氏)。
EVUM Motors社は、aCarの設計およびエンジニアリングだけではなく、ドイツのバイエルバッハの新しい生産施設の3Dレイアウトの開発にも3DEXPERIENCE プラットフォームを使用しています。これは、各車両の個別製造から量産レベルのアセンブリー・ラインの開発に移行するために重要です。仮想シミュレーションにより、プロセスを検証してアセンブリーのセットアップを最適化し、潜在的な製造の問題点を3D環境で特定して事前に修正できます。これにより、開発コストを抑えて、無駄を省くことができます。
EVUM Motors社の製造責任者、Maximilian Negele氏は次のように述べています。「生産設備の3Dレイアウトにより、生産ラインをシミュレーションしてプロセスをより詳しく把握できます。現在は小ロットの車両を生産していますが、規模を拡大して年産2,000車両を計画しています。」
ビジョンを訴求
aCarのような手頃な価格で利用しやすい電動車の価値が業界において認識されており、見本市での初期の好意的なフィードバックが、EVUM Motors社の急成長の重要な要因となっています。「aCarと似通った特徴の車両はいくつかありますが、当社のようにシンプルさを目的としてる企業はありません。モジュール型のアプローチ、低電圧バッテリー、屋根に取り付けたソーラー・パネル、耐久性に優れた頑丈で極めてシンプルな構造により、当社は世界中のあらゆる場所で多くのセクターにわたって使用できる車両を開発しています」。
同社は現在、仮想現実を利用して、世界中の見込み客にそのビジョンを伝える方法を模索しています。
「3DEXPERIENCEプラットフォームにより、たとえば3Dコンフィギュレーターなどのリアルなバーチャル体験を開発して、見本市での展示、商談やデモで利用できるため、物理的な車両は不要です。新たな開発レベルを示したり、最新の改良点やデザイン・オプションを直感的な没入型のリアルな体験を通じて確認してもらうこともできます」。
クラウド版のプラットフォームにより、同社は小型商用車市場をリードするOEMとしての地位を確立して、グローバルな事業拡張の強固な基盤を築いています。
「当社は、シンプルなモビリティ・ソリューション企業というイメージにより、認知度を高めています。エレクトロモビリティは高価ではなく、誰もが利用できることを世界中で実証していきたいと考えています」。
EVUM Motors社について
EVUM Motors社は、ミュンヘン工科大学の先見的な研究プロジェクトに端を発するスピンオフ企業であり、小型電動四輪駆動のまったく新しいタイプの小型トラックを開発しています。aCarリサーチ・プロジェクトの商用化への進展が、EVUM Motors社の原動力であり、エコノミーとエコロジーを組み合わせた、農業、工芸、工業、自治体、レクリエーションのセクターに理想的な電動車の市場への投入を目指しています。
詳細情報:www.evum-motors.com
CENIT社について
同社は持続可能なデジタル化を支援しています。ダッソー・システムズのソリューションは、製品ライフサイクル管理、デジタル・ファクトリー、企業情報管理の革新的な技術に基づいています。同社のコンサルタントは、バリュー・チェーン全体を理解してソリューションが導入されるように、エンドツーエンドのアドバイスを顧客に提供しています。包括的なアプローチと信頼できるパートナーシップに基づいて、同社は顧客に代わりソリューションに対する責任を負います。同社は30年以上にわたって主な業界有数のクライアントの競争優位性の獲得を支援しています。